【元文春エース記者 竜太郎が見た!】猛省すべきは相撲協会の悪しき体質 日馬事件、協会関係者の反応は「たいした問題ではない」だった

なぜか悲劇の主人公になりそうな日馬富士

 先週土曜日の2日、県警の事情聴取のため鳥取へ向かう元横綱日馬富士は、記者から「お世話になった方々へ何か一言」と問い掛けられ、涙ぐみ目頭を押さえながら「しっかり話したい」と語った。

 いったい、なぜこんなことになってしまったのか-。

 モンゴルから単身来日し、厳しい上下関係と言葉の壁に苦労しつつ、国技の最高位までのぼりつめた日馬富士の胸中にはこんな思いが去来しているに違いない。

 「流れが変わったのは、横綱審議委員会が厳しい処分が必要という見解を示したこと。現役横綱の解雇となれば相撲協会にとって前代未聞の不祥事です。番組編成会議までに引退届を出せば、初場所の番付表に日馬富士の名前を出さなくて済むし、引退であれば退職金が受け取れる。日馬富士が不本意であってもその選択肢しかなかった。協会の意向に忖度した形です」(相撲記者)

 引退会見は貴ノ岩への謝罪というよりも協会やファンへの謝罪の印象が強く、日馬富士が「礼儀がなっていないことを教えるのは先輩の義務」と弁解したように、制裁を加えるのが当然という認識は拭えないでいる。

 家庭内虐待が世代を越えて連鎖するように、いわゆる“かわいがり”行為も、“相撲界の伝統”として体に染みついているのだろう。それは日馬富士に限らず、相撲界全体も同じだ。

 暴行事件発覚当時、取材を進めると、協会関係者の反応は「たいした問題ではない」というものだった。貴ノ岩が「鳥取巡業の後もピンピンしていた」という証言やそれを裏付ける映像も出てきた。

 事件発生から1週間後に暴行事件を知った相撲協会が発表しなかったのも、暴力に対する認識の甘さ、つまりは「相撲界の常識」に基づいた、間違った判断だったと言えよう。

 一方で、相撲界全体を混乱に陥れている“戦犯”とされているのが、貴ノ岩の師匠で協会と対立している貴乃花親方だ。

 「理事会での傲慢に見える態度が映像で流れていますが、協会は御用マスコミを通じてネガティブな情報を流しています。そのため『貴乃花憎し、日馬富士かわいそう』という世論まで出てきた。しかし本来猛省すべきは、伝統にあぐらをかいている相撲協会の悪しき体質なのです」(前出・相撲記者) 

 ■中村竜太郎(なかむら・りゅうたろう) ジャーナリスト。1964年1月19日生まれ。大学卒業後、会社員を経て、95年から文藝春秋「週刊文春」編集部で勤務。NHKプロデューサーの巨額横領事件やASKAの薬物疑惑など数多くのスクープを飛ばし、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞受賞は3回と歴代最多。2014年末に独立。16年に『スクープ! 週刊文春エース記者の取材メモ』を出版。放送中「ブラックリベンジ」(日本テレビ系)の監修を担当。