【フリーアナウンサー近藤淳子のまもなく本番です】とある映画のワンシーン出演をきっかけに… 経験こそ財産

映画の衣裳合わせで

 とある映画のワンシーンで、私はホテルの会場で授賞式パーティーの司会役を務めました。それまで経験したドラマやCM撮影では、アナウンサーのスキルを求められることが多く、演技をする必要はありませんでした。ただ、その映画で、初めて監督に演出をしていただくという体験をしたのです。

 かなり不器用な私は、頭の中で監督の演出を考えると、どう動いて良いのか分からず、言葉の発し方だけではなく、目線の送り方も手の動かし方さえもぎこちなく、台詞は棒読みのようになったことを今でも思い出します。

 その後も、演技は苦手なのにアナウンサー役での出演が続いた時期がありました。きっとマネージャーさんも見るに見かねたのでしょうか。所属事務所ホリプロで、俳優を目指している新人タレントさんたちにまじって、演技レッスンを半年間ほど受けました。次々と本番はやってくるので、藁にもすがるような気持ちでレッスンに必死で通いました。

 レッスンでは、いろいろなシーンで台詞があったとしても、その台詞を表現する方法は個人の中に無限にあるということ。台詞は暗記するだけではなく、自分の役割は何なのかを突き詰めていくということ。生きたシーンになるには、一人だけでは成立せず、相手役との呼吸があってこそスタートに立てるということ。目に見えるシーンであっても、目に見えない背景までも想像しておくということなど、アナウンサー経験だけでは知りえない多くを学びました。そして、これらのレッスンがアナウンサーの本番と繋がっているとも感じました。

 基本的に、アナウンサーは一人でニュースを読んだり、レポートをしたりしますが、本番には大勢のスタッフたちが関わります。そして、それぞれのワンシーンで、各々の役割を全うします。つまり、それぞれの役割をプロフェッショナルに演じているのではないかと感じました。私は演じるという未知を難しく考えすぎていたのかもしれません。

 レッスン前、俳優さんがどんな気持ちで役に向かうのか、全く想像できませんでした。でも短い期間でしたが、自らレッスンを受け、教えていただいた内容を実践したことで、俳優さんにインタビューするときの質問の中に、何か少しでもヒントが生まれる気がします。

 そして楽しみも増えました。一緒にレッスンを受けた若者たちが、テレビや映画の世界で大活躍する姿を見ると、「よかったな」と、陰ながら応援する母のような気持ちになります。

 アナウンサーの仕事は、主役が絵とすれば、その絵の額縁であると思っています。苦手な演技ですが、レッスンを受けたことがこんなにも役立つとは思ってもいませんでした。目の前にいただける経験こそ、財産だと思います。

 ■近藤淳子(こんどう・じゅんこ) 1975年1月30日生まれ、愛媛県出身。報道キャスター、情報番組レポーター、ドラマ、CM出演、ラジオパーソナリティーとして活躍中のホリプロアナウンサー(元TBS系北陸放送)。また、日本酒きき酒師の資格を持ち、日本酒コンテスト審査員や日本酒コラム執筆連載、コンテンツ番組「日本酒記」やライフスタイル音声マガジン「SELECTORS」などで日本酒の魅力を伝える。全国のお酒イベントでも多数司会を勤めている。2009年から主宰する女性限定の「ぽん女会」で、蔵元と日本酒とお料理を楽しむ空間を企画プロデュース。多くのメディア媒体がその活動を掲載。公式ブログ「あ・い・ろ・ぐ」。一児の母。