【ぴいぷる】堺雅人「素の自分は黄泉の国にいるみたいなもの」 前世から現世へ、精魂込め転生

堺雅人

 精魂込めた演技で、数多くの映画、ドラマに主演する日本を代表する俳優だ。昨年はNHK大河ドラマ「真田丸」に主演し、1年間、真田信繁(幸村)を演じ続けた。

 「『真田丸』というのはお城の名前ですが、よく船の名前も『○○丸』というように、タイトルは戦国の荒波を生き延びた家族が乗った一艘の船にも例えているようで、この撮影も、長い世界一周の旅をさせていただいたような感じでした。それぞれの寄港地に思い入れもありますし、いい旅でしたね」

 次の“旅”も面白そうだ。9日から公開される主演映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」。魔物や幽霊、妖怪や死神が現れる鎌倉に暮らす作家、一色正和(堺)のもとに若い妻、亜紀子(高畑充希)が嫁いでくる。ある日、亜紀子の姿が消えていた。あの世に旅立っていたのだった。一色夫婦の命をかけた運命が、今動き出す。

 「初めて台本を読んだとき、幼いときに図書室でいい絵本を読んだときのような気分がしたんです。妻を連れ戻しに黄泉(よみ)の国に行くという話は、神話でもあるので、懐かしい感じもしました」

 メガホンを撮ったのは、ヒット映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの山崎貴氏で、脚本、VFX(視覚効果)も手掛けている。

 「山崎組は、監督の穏やかな人となりもあって優しい現場でした。目の前にいる妻との関係だけを見て演じたので、グリーンバックの前での撮影でも苦はなかったです」

 同作でも正和になりきって熱演しているが、どんな作品でも、撮影が終わった後、役を引きずったりはしないのだろうか。

 「この映画が黄泉の国の話だからというのもありますが、1つの役が終わって、次の役に取り掛かるまでのぼんやりとした時間というのが、死後の世界にちょっと似ているような気がするんです。前世というのは、前の役であり、素の自分でいるときは黄泉の国にいるみたいなもので。前の役を思い出してはいるけど、だんだん忘れていっていて、次の作品の台本をいただいて、思いが少しずつ固まっていき、次に生まれ変わる感じですね」

 その“前世”でいえば、2013年に主演したドラマ「半沢直樹」(TBS系)では、最終話の視聴率が42・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。彼にとって、視聴率はどんなものなのだろうか。

 「視聴率がいいときは、ボーナスみたいなものですね。それだけが目的ではないので、そういうところでお芝居をしないようにはしています。結果は欲しいし、勝つためにやるのですが、負けそうなときに手を抜くかというと、そんなことはないですしね」

 人気ドラマシリーズ「リーガルハイ」(フジテレビ系)では、彼が演じる敏腕弁護士、古美門研介の機関銃のような長セリフに役者魂を感じる人も多いが、意外なことに「セリフ覚えは良くはない」と言う。

 「セリフはひたすらブツブツ言って覚えます。『リーガルハイ』の長セリフは、呪文を唱えるように覚えていきました」

 実はかなりの努力家なのだ。早朝から撮影があることも多いが、そんなときに役立つのが「ラムレーズン入りのチョコ」だという。

 「朝、起きたくないときは、『冷蔵庫に入れてあるレーズンチョコを食べよう』と思って、頑張って起きます。物で自分を釣ります」

 現在44歳。「40代になってから、疲れが出るようになった」と本音を漏らす。

 「今回は全力疾走をするというシーンがあったのですが、1回目はいいんですよ。でも2回目からは体が全力で拒否をするんです。『行きたくな~い』って。今後に備えて、この撮影が終わってからは、週1ペースでジムに行くようにしました」

 疲労は出るが、「俳優として、年を重ねるのは楽しみ」だと笑顔を見せる。

 「年をとらないとできない役はありますし、今回もいろいろな先輩の俳優さんとご一緒しましたが、みなさんすてきな方でした。おじいちゃんになってもできる仕事なので、いつかおじいちゃん役もやりたいですね」

 チャーミングな少年のような一面を持つ、才能豊かな俳優だ。(ペン・加藤弓子 カメラ・福島範和)

 ■堺雅人(さかい・まさと) 俳優。1973年10月14日生まれ、宮崎県出身。44歳。92年から劇団東京オレンジ(早稲田劇研)で活動を始め、看板役者として注目を集める。映画「クライマーズ・ハイ」(2008年)、「ジェネラル・ルージュの凱旋」(09年)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、「武士の家計簿」(10年)、「鍵泥棒のメソッド」(12年)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した。吉永小百合主演の出演映画「北の桜守」は来年3月10日に公開予定。妻は、女優の菅野美穂。