【フリーアナウンサー近藤淳子のまもなく本番です】話し上手になるには、まず「聴く力」を鍛えてみては?

フリーアナウンサーの近藤淳子

 金沢の放送局に勤務していたとき、東京キー局で全国放送されている番組にお邪魔し、系列局を結ぶ年末特番の中継内容について番宣したことがありました。伝える内容は事前打ち合わせで決まっていたのですが、慣れ親しんでいる金沢のスタジオと違う空気にのまれてしまったのか、本番中にも関わらず一瞬口籠ってしまいました。そのトークで一瞬の間が出来た時、番組司会者だった福留功男アナウンサーが私の目をしっかり強く見て、満面笑顔で大きくゆっくりと頷いてくださいました。ほんの一瞬の動作でしたが、そのおかげで不意につまっていた言葉もスムーズに復活。福留アナは表立って言葉を発する事なく、私の緊張を瞬時にほぐしたのです。まさに話を聴くプロの技によって背中を押して頂いた瞬間でした。同時に話し方を鍛えたければ、聴き方も一緒に鍛えていかなければいけないことを実践で教えて頂いた本番となりました。

 とある放送局のアナウンサー試験の人事担当者が、「話しているときは勿論のこと、人の話を聴いているときの表情や態度こそ観察している」と話していました。

 アナウンサーの本番に限ったことではないと思います。社会生活を送っている中で話し上手になりたいという方は、冠婚葬祭や学校行事などでのパブリックスピーチの聴き方を鍛えてみるのもいいかもしれません。話し手をしっかり見て頷いたり、内容に寄り添った表情で聴くことが、聴き手から話し手へエールを送ることになると思います。もし、話し手が聴き手であるあなたの方ばかり見ていたら、とても上手く聴けていて、話し手はあなたの聴く力に助けられているのかもしれません。

 聴く力を鍛えていると、逆に自分がパブリックスピーチをする立場になった時、興味津々で聴かれているのか、内容に飽きられているのか、それぞれの聴き方を感じられるようになると思います。つまり、自分のスピーチへの注目度も推察できる能力が身につくと思うのです。

 その注目度によって聴き手全体のバランスが徐々に冷静に感じられるようになり、話の内容を切り替えてみたり、間延びしないようにコンパクトに短縮してみたりと、色々試せる余裕も出てくるかもしれません。トークしながらも、そのトークの方向性を自身で俯瞰しながら分析できる能力を身に付けることで、緊張対策にも繋がると思います。

 聴く力を鍛えることは、まずは話し手への大切な思いやりであり、エールである…そして、巡り巡って自分自身が話す時のエールにもなると確信しています。

 話し上手になりたい方、まずは聴く力を鍛えてみませんか? 私も頑張れる環境をいただける限りは、鍛えていければと思います。

 ■近藤淳子(こんどう・じゅんこ) 1975年1月30日生まれ、愛媛県出身。報道キャスター、情報番組レポーター、ドラマ、CM出演、ラジオパーソナリティーとして活躍中のホリプロアナウンサー(元TBS系北陸放送)。また、日本酒きき酒師の資格を持ち、日本酒コンテスト審査員や日本酒コラム執筆連載、コンテンツ番組「日本酒記」やライフスタイル音声マガジン「SELECTORS」などで日本酒の魅力を伝える。全国のお酒イベントでも多数司会を勤めている。2009年から主宰する女性限定の「ぽん女会」で、蔵元と日本酒とお料理を楽しむ空間を企画プロデュース。多くのメディア媒体がその活動を掲載。公式ブログ「あ・い・ろ・ぐ」。一児の母。