【秘録 今明かす「あの時」】最後の笑顔をカメラに ビートルズ、日本公演後“笑えぬ”不運

★ビートルズ撮ったど!!(下)

 ビートルズは1966年7月2日、日本武道館で行った3日間のコンサートの最終公演を迎える。初日は歌っている最中にマイクが何度も横を向いてしまうハプニングにも見舞われたが、日本中の興奮に水を差すことはなかった。

 「正直、何月何日に撮ったものなのか、覚えてないんですよ」

 講談社の女性週刊誌『ヤングレディ』編集部のカメラマン3年目だった佐々木惠子(74)は、ジョン・レノンに続き、再びポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンのスクープ写真をものにする。

 彼女の記憶にはないが、2日の公演を終えて宿泊先の東京ヒルトンホテル(現ザ・キャピトルホテル 東急)に戻ってきたところとみられる。

 ポールはタオルを首に巻き、満足そうな笑顔を浮かべ、ジョージは奥にいるスタッフに何やら視線を送っている。

 佐々木はホテル駐車場に止まった車に飛び出していき、正面からシャッターを切ったとみられ、大胆なカットとなった。

 成功裏に終わった日本公演だが、メンバーにはその後、不運が連続する。

 翌3日、メンバーは離日して次の公演先のフィリピンへ向かった。4人はマルコス大統領夫人、イメルダから食事会に招かれていたが出席がかなわず、現地メディアに「大統領を侮辱した」などと報じられる。比国民は激怒し、ほうほうの体で出国する。

 次の米国ツアーでは、ジョンが雑誌のインタビューで語った「僕たちはいま、キリストよりも人気がある」との発言が、今で言う“大炎上”してしまう。信仰の厚いメンフィスでは暗殺の恐怖におびえた。この年を最後に、ビートルズはコンサート活動を停止した。

 佐々木は結果的に、ライブアーティストとして明るい表情を浮かべていた“最後のビートルズ”を記録したことになる。

 来日から50周年を迎えた昨年、写真は東京・渋谷で開かれた展示会で久しぶりに公開され、多くの観客で賑わった。

 「『武道館で見たんですよ』という女性が、当時のチケットを大事そうに手にしてやってきたりね」

 一方で、こうした写真があることを知った何者かが、「あの作品は私が権利を買い取った」などと吹聴しているとも耳にした。「半世紀たって、良くも悪くも4人の偉大さを知りました」と苦笑いする。

 「駆け出しのころの良い思い出です。いまでは私もビートルズの一ファンです」。75歳になるポールが現役でステージに上がるのと同じく、女性カメラマンの先駆者はいまも愛機を手に被写体に向きあっている。=敬称略(宇都木渉)