【人たらしの極意】「戦争は嫌だ」真正面から叫ぶ吉永小百合とエマ・トンプソンの演技に感服

吉永小百合

 吉永小百合が主演し、“北の三部作”の掉尾を飾る映画「北の桜守(さくらもり)」が今年3月に公開される。過日、都内で完成披露試写を見て、改めて平和と親子の絆の大切さを思った。

 第二次大戦末期。ソ連侵攻で樺太を追われた母と息子が、北海道で過酷な環境の中、貧しさと戦いながら生き抜く物語。「おくりびと」の滝田洋二郎監督がメガホンを取り、吉永と堺雅人が親子役を演じる。

 滝田監督とともに、舞台あいさつに立った吉永は「台本を読んだとき、とても難しい役だと思った」と言いながらも120本目の出演作に堂々の自信を見せていた。

 戦争に抗う力強い吉永の母役が、私にはもうひとつの映画と重なった。新作DVDが出たばかりの映画「ヒトラーへの285枚の葉書」(英独仏合作)に主演した英オスカー女優、エマ・トンプソンだ。

 こちらは、1940年、ナチス政権下のベルリンが舞台。独り息子の戦死の報に、母親は「ヒトラー総統が息子を死に至らしめた」とナチス政権を批判するハガキを書き始める。それをベルリンの街のあちこちに、そっと置いて立ち去る-という抵抗運動を始めた。

 SNS全盛の現代では、考えられない“拡散”の手法だが、その静かで断固たる反戦の姿勢には妙にシンパシーを覚えた。72歳の吉永小百合には、この58歳のエマ・トンプソンに負けない凜とした美しさがある。

 昨年末のNHK紅白歌合戦では、アイドルグループの欅坂46が、自分の正義を信じ抜き、体制に染まることを「僕は嫌だ」と叫ぶ異色ソング「不協和音」を歌った。感極まってメンバーが本番中に過呼吸で倒れたことで、かえって注目を浴びている。

 私にとってのアイドルは、吉永小百合とエマ・トンプソンだ。「戦争は嫌だ」と真正面から叫ぶ彼女たちが、「僕は好きだ」。(出版プロデューサー)

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