【時代のサカイ目】宇多田ヒカルや椎名林檎のプロデュース力、これからの音楽シーンを揺さぶるか?

宇多田ヒカル

 宇多田ヒカルが、その声にほれ込んだ新人アーティスト、小袋成彬(おぶくろ・なりあき)をプロデュースする。

 きっかけは、2016年のアルバム『Fant?me』の制作時、彼の歌唱動画を見つけたディレクターから紹介されたこと。声にひかれた宇多田が、収録曲『ともだちwith小袋成彬』でコラボしたという経緯がある。

 「この人の声を世に送り出す手助けをしなきゃいけない。そんな使命感を感じさせてくれるアーティストをずっと待っていました」と宇多田の方から小袋のプロデュースを買ってでた。

 小袋は「一部の人にはよく知られている程度の編曲者」と自身が言うように、学生時代にR&Bユニット『N.O.R.K』で活動し、音楽レーベルを立ち上げ、『水曜日のカンパネラ』や柴咲コウらをプロデュース。また昨年秋公開の映画『ナラタージュ』の主題歌を歌ったadieuのアレンジとプロデュースも手がけている。新人とはいえ裏方としての実績はある。

 ソロデビューアルバム『分離派の夏』(4月25日発売)に収録された14曲は、アルバムが1冊の小説のような構成になっていて、ややかすれたはかなげなファルセットから慟哭(どうこく)するような歌い上げまでその声に魅了される。

 宇多田プロデュースとはいえ、作編曲、ジャケットデザインなどは小袋自身の手になるが、衣装などのビジュアルも含めて宇多田が作品作りをバックアップした。

 既にApple Music、LINE Musicなどで先行ストリーミング配信されている『Lonely One feat 宇多田ヒカル』やYouTubeでの先行映像も評判を呼んでいる。

 椎名林檎も松たか子、満島ひかり、石川さゆりなど主に女性のプロデュースを数多く手がけるが、作品には椎名カラーがちりばめられている。椎名が歌わずとも、そこには椎名林檎の顔が存在しているのだ。

 さらには、これまでの女優や歌手の持つイメージとは別の角度からアプローチし、新たな一面を引き出すというプロデューススタイルを取る。楽曲もビジュアルもトータルでディレクションすることで、ひとつの世界を創り上げる。椎名自身が“演じる”アーティストだということも大きい。

 全くアプローチの仕方は違うが、宇多田と椎名、2人の天才肌ともいえる女性アーティストのプロデュース力は、これからの音楽シーンを大きく揺さぶってくれそうで楽しみだ。

 ■酒井政利(さかい・まさとし) 南沙織、郷ひろみ、山口百恵、キャンディーズ、矢沢永吉ら300人余をプロデュースし、その売上累計は約3500億円。「愛と死をみつめて」、「魅せられて」で2度の日本レコード大賞を受賞した。2005年度、音楽業界初の文化庁長官表彰受賞。