【元文春エース記者 竜太郎が見た!】のん、ローラ…事務所トラブル、芸能界の理不尽な契約浮き彫り 公取委見解で動いた芸能プロ

独立騒動を起こしたのんは本名が使えない状況だ

 「私は小さい頃からアイドルになりたくて、竹下通りでスカウトされた芸能プロダクションに入ったんです。そしたら登録料やレッスン料を請求されて、親に出してもらいました。けれど全然仕事がなくて、事務所に聞いても、売り出していると口で言うだけ。結局辞めましたが、事務所に支払ったお金は総額600万円で、唯一の仕事は日給2万円のラウンドガールだけ。人の夢を食い物にする芸能界は最低なところだと思いました」(20代女性)

 輝くスターを生み出す一方で、芸能事務所とタレントの間のトラブルはつきない。SMAPの独立騒動やローラの“奴隷契約”発言が報じられるたび大きな関心を集め、あらためて芸能界の理不尽な契約実態が浮き彫りになっている。

 「のん(本名・能年玲奈)は『あまちゃん』撮影時の月給が5万円で、独立後は本名が使えない状況です。清水富美加は睡眠3時間で1カ月働いても月給5万円だったと告発しています。ただ独立したタレントについて長い物には巻かれろという体質のテレビ局は、事務所側に忖度して使いません」(ワイドショーデスク)

 そんな折、先週末に公正取引委員会が芸能事務所と芸能人の専属契約について、両者の力関係に基づく移籍制限は問題になる場合があると指摘。フリーランスであるタレントを保護する方向の初の見解ではあるが、一方で事務所が育成のための投資を回収する必要があることには一定の理解を示した。

 「日本の芸能界とそれを見習った韓国の芸能界の契約は、エージェントシステムが標準の欧米からみれば異常です。ユニオンに加入しているかどうかで若干違いますが、タレントはエージェントが取ってきた仕事に20%の手数料を支払う。そして自分のギャラから付き人やメーク、スタイリスト、弁護士など一切の経費を負担する。すべてフェアで細かい契約に基づいています。日本の芸能界が金額を事前に決めずに仕事を依頼してくることや口約束が横行しているのも常識的に考えられません。日本の芸能界はヤクザが仕切っていると信じている外国人も少なくありません」(在米エージェント)

 それでなくても個人よりも組織が優先される日本だが、弱い立場の人々の権利を守ろうとする公取委の取り組みに期待したい。芸能プロダクションで構成する日本音楽事業者協会(東京)も公取委の見解を受けて、多くの芸能事務所が採用する「統一契約書」の見直しを始めている。芸能界もさらなる近代化が求められている。

 ■中村竜太郎(なかむら・りゅうたろう) ジャーナリスト。1964年1月19日生まれ。大学卒業後、会社員を経て、95年から文藝春秋「週刊文春」編集部で勤務。NHKプロデューサーの巨額横領事件やASKAの薬物疑惑など数多くのスクープを飛ばし、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞受賞は3回と歴代最多。2014年末に独立。16年に『スクープ! 週刊文春エース記者の取材メモ』を出版。