【大鶴義丹 それってOUTだぜ!】「下町ボブスレー」不採用で炎上 マスメディアの方程式が通用しないネット力学

ジャマイカは結局、別の国のそりで滑った(ロイター)

 会場の不備や北朝鮮をめぐる政治的問題で惑わされ、鬼が出るか蛇が出るかで始まった平昌オリンピック。しかし結果は日本のメダルのラッシュで幕を閉じた。

 吉報ばかりがメディアで踊る中、東京都大田区の町工場を中心に製作された国産そり「下町ボブスレー」を、ジャマイカ代表チームが開幕寸前に使用しないと決定するという事態が起きた。

 日本側は、ジャマイカ側に契約不履行による損害賠償請求も辞さないとの考えを示したという。数年前からテレビや書籍化され、下町的美談で有名なプロジェクトだったのでとても驚いた。

 しかしこの「不採用」は、マスメディアよりもネットを中心に大きく炎上した。ネットでの大半の意見は、補助金を使って性能の悪いボブスレーを作っておきながら、ほごにされるや違約金請求するなどと日本の恥さらしだという類であった。さらには気にさわったらしく、同プロジェクトスタッフの個人攻撃にまで事は広がった。

 私はこの炎上にとても気味の悪さを感じた。

 ハッキリ言ってフィギュアスケートと比べたら、競技そのものや、ジャマイカの選手、ボブスレーの性能に興味のある方は少数のはずだ。言葉は悪いが、騒ぐほどの話題性があるとはどうしても思えないのである。国際ビジネスにありがちなトラブルで残念でしたね…で読み飛ばすようなマイナーな話題なのだ。

 経緯や本質よりも、こういう「美談の破綻」が、今の日本人は大好きなのだと感じた。そして違約金を請求するという部分が、日本人の大好きな「潔さ」がないと、火に油を注いだということだろう。

 「違約金」の部分を発表しなければ、ここまでの炎上騒ぎにはならなかったかもしれない。だがプロジェクト側としても混乱の中、マスメディアにオープンに対応したのだろう。被害者でもあるのだから、それで当たり前である。

 しかしネット力学というのは、得てして既存のマスメディアの方程式が通じないことが多い。そこまで想定しての対応が必要な時代なのだろう。

 ■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画「首都高速トライアル」で俳優デビュー。90年には「スプラッシュ」で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。現在「アウト×デラックス」(フジテレビ系)に出演中。