【ぴいぷる】勇往邁進、信念貫く 声優・江口拓也 新聞配達で睡眠時間削る日々「血尿出ました」

声優の江口拓也

 小顔で眼鏡の奥の涼しげな目元が印象的なイケメン。しかも187センチの長身とモデルばりの外見が目を引く。TVアニメ「機動戦士ガンダムAGE」(2012年)、「黒子のバスケ」(12年)、「俺物語!!」(15年)、「アイドリッシュセブン」(18年)など話題作に次々に出演した人気声優だ。08年にデビューし、今年節目の10周年を迎える。

 「あっという間でした。すべては、お金のない状態から高校を卒業して、東京に行き、一人暮らしを決断したことからの挑戦でした」

 茨城県出身。高校時代、たまたま聞いていたラジオ番組がきっかけで声優を目指す。その後、専門学校に進み、新聞配達をしながら学校に通ったという。

 「単純にお金がなくて学費を稼ぐためにしたんです。当時睡眠が一番大事だったんですが、嵐の日でも雪の日でも午前3時半から新聞を配る。そういう生活を続けていると1年半ぐらいで体に異常が現れ、血尿が出ました。そこまでして、夢中になって追いかけることが自分の中にあるんだなって。そのとき、(声優として)やっていけるって思いました」

 実は当初、両親や友人から厳しい意見が相次いだと明かし、「『絶対無理だろう』って言われていたんです。自分はあまのじゃくなので、反対意見がすごくエネルギーになりました」。

 さわやか笑顔の中に、骨太な男らしさをみた感じだ。2年間の専門学校時代に鍛錬した声を武器にし、その努力はデビュー2年目に実った。アニメ「東のエデン」(09年)の主要キャスト、大杉智を担当。オーディションで初めて受かった役が転機になった。

 「最初は主人公の声で受けたんですが、監督が『大杉の声だ』って。でもこのオーディションに受かったことで、350人ぐらいいる、うちの事務所の中でも認知してもらうことができました」

 声優事業社協議会の加盟事務所には現在、男女合わせて声優約6300人が名を連ねる。日々、熾烈(しれつ)な競争が展開されるが、江口は冒頭の作品やほかの人気作に出演するなど快進撃が続く。

 「ただ…」と本音も続いた。

 「アニメって必ずオーディションがあるんです。一生これを続けていかないと食べていけないという、目に見えない不安のようなものはなんとなくありますね」

 そんな競争社会で勝ち続けるため、常に感性を磨き、幅広く活動する。TOKYO MXで紀行バラエティー「江口拓也の俺たちだっても~っと癒されたい!」(隔週水曜午後11時)が放送中。2年前にテレビ地上波初の冠番組として始まり、第3シーズンを迎えた。11年には音楽ユニットを結成したほか、昨年10月に初舞台を踏むなど、攻めの姿勢を貫いている。

 「“俺癒”の番組も歌の活動も、すべてはマイクの前にもっていくための挑戦。やっぱり声優という職業に一番重きを置いているので。いい作品をつくっていきたい」と足もとは見失わない。

 新たな取り組みも。シリーズ初の番組企画展「俺癒展」(東京・渋谷のギャラリー『ルデコ』で27日~4月1日)を開催。毎回ロケ先で描いたイラスト約180点や、今回のために描いた巨大イラストを展示するなど興味深い内容が満載だ。

 「直接見て何かを感じてもらえたら。興味ある方はぜひいらっしゃっていただきたいですね」

 昨年30代に突入した。プライベートも気になってくるが、好みのタイプを尋ねると「元気な人。基本根暗なんで」と笑わせる。結婚観については「父が28歳の時だったんですが、もう越しちゃったので…。したくなったらするし、絶対しようとも思わない」と自然の流れに任せるようだ。

 最後に今年の抱負を聞くと、意外な返答が-。

 「健康診断に行きたい! 社会人になって一切受けていないので。スケジュールを合わせるのが面倒だし、番組でやってくれないかな(笑)」

 時に柔軟に時に熱く、今後も“俺流”で邁進(まいしん)する。(ペン・箱崎宏子 カメラ・桐原正道)

 ■江口拓也(えぐち・たくや) 1987年5月22日生まれ、30歳。茨城県出身。2007年に現事務所「81プロデュース」の第1回オーディションに合格し、声優界入り。08年に「真救世主伝説『北斗の拳 トキ伝』」でデビュー。主な出演作品は「機動戦士ガンダムAGE」「黒子のバスケ」など多数。11年に木村良平、代永翼と音楽ユニット「Trignal」を結成し、翌12年にミニアルバム「PARTY」でCDデビュー。17年10月「銀の国 金の歌」で初舞台。第6回声優アワード新人男優賞などを受賞。特技はバスケットボール。