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【酒井政利 時代のサカイ目】あらゆる方面で“元祖”だった阿久悠さん 伝説のオーディション番組『スター誕生』も企画

 作詞家、阿久悠さんが亡くなって10年。改めてその偉業に敬意を表し、氏自身や作品にスポットライトが当たっている。

 『24時間テレビ40 告白~勇気を出して伝えよう~』(日本テレビ)の中で、阿久さんの軌跡を描いた『時代をつくった男 阿久悠物語』(亀梨和也主演)が放送されることになり、ドラマと連動して未発表詞につんく♂が曲を付けるという。

 氏の没後、遺作を高橋真梨子、島津亜矢、一青窈らが次々と歌い、すでに56曲にもなっている。

 トリビュート版の制作も進んでいて、吉田拓郎らが作曲に加わって話題になりそう。

 生前、5000曲もの詞を書き、総セールスは7000万枚にものぼる。名実共に20世紀を代表する作詞家だ。特に70~90年代の昭和歌謡の黄金期は、氏の作詞があってこその一面を持つ。

 それを裏付けているのが、打ち立てた幾つもの金字塔だろう。

 日本レコード大賞では、1971年『また逢う日まで』(尾崎紀世彦)、76年『北の宿から』(都はるみ)、77年『勝手にしやがれ』(沢田研二)、78年『UFO』(ピンク・レディー)、80年『雨の慕情』(八代亜紀)と作詞家としては最多の5曲で受賞。また同じく作詞賞でも最多の7曲で受賞。

 さらには日本作詩大賞でも、81年『もしもピアノが弾けたなら』(西田敏行)などで最多の8回受賞している。

 「歌詞は4分間の映画のシナリオ」と語っていたように、阿久さんの詞にはドラマが見えた。一瞬を切り取った場面も、長い人生を感じさせる場合もあった。

 また阿久さんはあらゆる方面で“元祖”だった。『また逢う日まで』ではロックと歌謡曲を融和させ、ピンク・レディーでは子供向けとか大人向けという壁をあっさりと取り払った。

 今でこそ、アニメソングはジャンルとして確立しているが、74年に『宇宙戦艦ヤマト』が大ヒットした当時、アニメは子供のもので、“大人も聞けるアニメ主題歌”の存在を知らしめた功績は大きい。

 大学卒業後、広告代理店に就職し、戦略を磨いていたこともあり、企画力にも優れた人だった。

 森昌子、桜田淳子、山口百恵らを輩出した伝説のオーディション番組『スター誕生』(日本テレビ)や、3億円事件を題材にした沢田研二主演のドラマ『悪魔のようなあいつ』(TBS)も、氏の企画だ。

 新しい価値観を作り、新しい時代をもたらした阿久さんの遺した作品は深くて今でも新しい。

 ■酒井政利(さかい・まさとし) 南沙織・郷ひろみ・山口百恵・キャンディーズ・矢沢永吉ら300人余をプロデュースし、売上累計約3500億円。「愛と死をみつめて」、「魅せられて」で2度の日本レコード大賞を受賞した。2005年度、音楽業界初の文化庁長官表彰受賞。

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