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字幕翻訳家・寺尾次郎さんしのぶ… ミニシアター映画を字幕で支えた、1秒4文字のアーティスト

 ジャン=リュック・ゴダール監督の数々の映画やウォン・カーウァイ監督の「欲望の翼」(1990年)などの字幕を手がけた寺尾次郎氏が6日朝、胃がんでこの世を去った。62歳だった。葬儀は親族と関係者のみで行われた。

 寺尾氏は慶応大学時代からベーシストとして活躍し、佐野元春のバックレーン元春セクションや、山下達郎らと「シュガー・ベイブ」に参加。やがて活躍の場を映画界へと移し、字幕翻訳家として活躍することに。

 字幕を手がけた映画の数は、フランスでは4月に公開された「Taxi5」まで200本を超える。寺尾氏が字幕を手がけたフランス映画は「髪結いの亭主」(90年)のように、日本で本国以上のヒットを記録するという現象も引き起こした。

 1997年11月にル・シネマ(東京都渋谷区)で公開され、ミニシアター空前の9カ月のロングランとなった「ポネット」も寺尾氏の字幕だ。

 監督のジャック・ドワイヨン氏は「寺尾氏がこの世を去ることは、あまりにも悲しいことです。私の『ポネット』や『ラ・ピラート』(1984年)は寺尾氏の字幕のおかげで、多くの人の感動を呼び起こしました。彼の美しい字幕なくして私の映画は、日本で理解され、愛されることはありませんでした」としのぶ。

 寺尾氏はベテラン字幕翻訳家の先輩たちからの信頼も厚かった。毎年、滞在したカンヌ映画祭では日本人がスリに遭えば警察へ、体調を崩せば病院に付き添い、得意のフランス語で映画ビジネスを越えて日本人に寄り添っていた。「ポネット」公開中の98年6月には40代の若さでフランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」を叙勲した。

 字幕翻訳者として1秒4文字に映画への情熱を注いだ寺尾次郎氏。生きていれば11日に、63回目の誕生日を迎えるはずだった。(小張アキコ)

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