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【中本裕己 エンタなう】死刑囚6人との対話…命を賭した壮絶な演技 大杉漣さん最後の主演作「教誨師」

 死刑囚を前に、なお「生きる」意味を教え、安らかな死へと導く。カウンセラーの究極であり、宗教家の神髄ともいえるボランティアを描く映画「教誨師」(公開中)が問いかけるテーマは、あまりに重い。400本を超える作品に出演してきた大杉漣さんの最後の主演作にして唯一のプロデュース作品だ。

 大杉さんが等身大で演じるプロテスタントの牧師、佐伯は教誨師として月2回拘置所を訪れる。面会する死刑囚は6人。無言を貫き、問いかけに一切応じない鈴木(古舘寛治)。気のよいヤクザの組長、吉田(光石研)。年老いたホームレス、進藤(五頭岳夫)。よくしゃべる関西出身の中年女性、野口(烏丸せつこ)。面会にも来ない我が子を思い続ける気弱な小川(小川登)。そして大量殺人者の若者、高宮(玉置玲央)。

 狭くて殺風景な空間では温厚で誠実さがにじみ出た佐伯と、どこかで道を間違え死を待つ者という対極にいる人物が向かい合う。その会話、息づかいだけで、ぐいぐいと引き寄せられる。「役者にケンカを売ってるのかと思った」と自ら評した膨大な台詞のオリジナル脚本を血として演じた大杉さんの命を賭した演技は壮絶である。

 役者としてタイマン勝負に挑んだ6人も実にリアル。攻撃的だったある死刑囚から人間らしさの片鱗が見える場面がひたすら切ない。声高に死刑廃止を叫ぶ物語ではないが、死刑執行の場面に立ち会った者でしか分からない感情の疑似体験が本作の狙いであることは間違いない。 (中本裕己)

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