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【BOOK】なぜ好きなのかわからないけれど、惹かれているのが恋 俵万智さん「牧水の恋」 (1/2ページ)

 ■高校時代に大失恋…牧水の歌に境遇重ね共感

 酒と旅と自然をこよなく愛した歌人・若山牧水の、ユニークな評伝が現れた。時代や作風は異なるものの、若山牧水賞作家で、趣向や心境に多くの共通点を持つ著者による本作はどのようにして生まれたのか。執筆の原点、気になるあれこれを聞いた。(文・たからしげる 写真・川口良介)

 --今年は牧水の没後90年(1928年9月17日、43歳で没)です

 「狙ったわけではありませんが、節目の年にこの本を出せて嬉しいです。そもそもは、もう7、8年前にさかのぼります。『文學界』に何か書いてみたいテーマはないかと聞かれて、牧水のことはいつか書きたいなと、ずっと思っていましたから。牧水賞をいただいたことが、一つの大きなきっかけでした。それまでは、歌集など牧水の書いたものは愛読していましたが、研究資料に触れるなど、本格的に調べることはありませんでした」

 --評伝のスタイルで書いていますね

 「最初は小説にしようかといって盛り上がったんです。でも、人には得手不得手がありますから。いろいろ考えていく中で、やはり私自身が一番得意なのは短歌を読み解くことだと思いました。例えば、『サラダ記念日』をもとに小説を書かれるより、歌を一首一首、深く読んでもらったほうが歌人としてはうれしいです。牧水も同じだろうと思いました。歌そのものを掘り下げていけば、展開自体はドラマチックなものなのでストーリー性も後でついてくるだろうという気がして、思う存分に書きました」

 --恋は、いつ始まるのでしょうか

 「人が恋に落ちる瞬間って、どういうところをもってそうなんだろうという興味は、ずっとありました。好きな理由が、イケメンだからとか、優しいからとか、金持ちだからとか、分かっているうちはただの好きで恋ではないんじゃないかと。なぜ好きなのかわからないけれど惹かれている、というのが恋だと思います。この人のどこがそんなに好きなの、と問われても説明できないんです」