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【映画通が一度は行きたい京都】『太秦ライムライト』の思い出(2) 「5万回斬られた男」と「500回アホと呼ばれた男」 (1/2ページ)

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 『太秦ライムライト』の製作で、最大の難関は福本清三氏に主演を引き受けてもらうことだった。長年斬られ役を務めてきた福本氏は「わしが主役やなんてアホかいな」と謙遜するばかり。

 多くのファンが福本氏の主演映画を見たがっている。会社でもスポーツでも、陰で支える世界中の縁の下の力持ちが共感するはずだ。脚本を書いては、何度もお願いしたが、そのたびに「アホなことゆわんといて」と断られた。私の顔を見るといつも「アホなこと…」と口にされ、そのうち道でばったり会って「おはようございます」とあいさつしても、条件反射的に「アホなこと…」と言われたほどだ。福本氏が「5万回斬られた男」なら、私は「500回アホと呼ばれた男」だ。

 映画の準備と並行して東映剣会に殺陣教室を毎月開催してもらった。自分で習って分かったのだが、チャンバラはただ派手なアクションではない。斬る側と斬られる側の呼吸があわないとけがをする。命のやりとりのシーンだが、もっとも大切なのは互いの信頼関係だ。つまりはコミュニケーションの基本なのだ。

 結局、奥様やファン、東映関係者の応援もあって、福本氏は主演を受けてくれた。私たちが殺陣教室で数年間真剣に取り組んできた姿を少しは認めてくれたのかもしれない。

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