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【中本裕己 エンタなう】老練なイーストウッドが演じる気骨と独立心 映画「運び屋」

 名実ともに巨匠といえる最後の現役映画人クリント・イーストウッド。88歳にして監督・主演を務めた最新作「運び屋」(公開中)も力強い。仕事一筋の老いた園芸家が、実はメキシコの麻薬カルテルで運び屋をやっていた-というニューヨーク・タイムズ紙の実話記事に着想を得ている。

 手塩にかけて育てた自慢の花を品評会に並べるアール・ストーン(イーストウッド)。絶賛され得意げだが、その10年後、ネット通販に負け廃業…。妻や娘に見放され、自宅も差し押さえられた孤独な老人に、「車の運転さえすればいい」と、若者のささやき。

 悪い予感しかしないのだが、爺さんはハンドル片手にカントリーミュージックを口ずさみ、ギャング団を相手にビビるどころか軽口も叩く始末。人生の艱難(かんなん)をくぐり抜けてきた退役軍人はヤワじゃない。大陸を股にかけ人生を賭けたロードムービーは、しだいに楽しくなる。移民や人種の偏見などアメリカ的な“今”もイーストウッド流に受け流す。

 実娘アリソン・イーストウッドが演じる娘に父親不在の“穴埋め”をする場面はじわっと胸に迫る。刻まれたしわに出る微妙な表情は、虚実ない交ぜとなり、娘にバトンを渡しているかのよう。

 そして、アールを追い詰める麻薬捜査官役のブラッドリー・クーパーへの語りかけ。老いて、遠慮がなくなったのではなく、「最初から遠慮なんてしてないさ」という気骨と独立心が光った。 (中本裕己)

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