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【中本裕己 エンタなう】歌舞伎町、ゴールデン街…新宿文化をつぶさに見てきた“生き証人”の正体は 映画「新宿タイガー」

 この方に新宿の映画館で何度か遭遇したことがある。ド派手な飾りに虎のお面。客もまばらなマイナー作品でも、最前列の真ん中に陣取る。異様さだけでなく、静かな後ろ姿がひどく気になっていた。その正体に迫ったのがドキュメンタリー映画「新宿タイガー」である。

 キャメラが追うのは、タイガーマスクの面をかぶり、カーリーヘアのかつらで、新宿・歌舞伎町周辺を新聞配達して40年以上になる男。

 勤務後に根城とするゴールデン街や新宿三丁目で飲むときは、あっさり面を外し、人なつっこい素顔を見せる。実はかなりの冗舌で、大好きな映画の話は止まらない。「映画が無ければ生きることが苦しい」とまで。新宿にある9つの映画館で、1日3本ハシゴすることも。「ローマの休日」をこよなく愛し、映画は美女中心。酒場では、彼が褒めちぎる有名無名の女優たちに慕われる。まれに男性の友人もいてピンク映画の帝王、久保新二や人気俳優、八嶋智人ら意外な交友も明かされる。

 ご当人にそのつもりはないかもしれないが、社会運動、アングラの中心だった新宿文化をつぶさに見てきた昭和、平成の生き証人だ。「金や権力より、美女の愛とスマイルを求めて生きてきた」という思いがこめられた無表情の面は、百の理屈より突き刺さる。佐藤慶紀監督、ナレーションは寺島しのぶ。22日から東京・テアトル新宿、4月12日から大阪・シネリーブルなど全国で順次公開。(中本裕己)

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