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【中本裕己 エンタなう】宇宙の密室で…性と生の根源を問う官能SF 映画「ハイ・ライフ」

 大作や話題作といったGWらしさの真逆を行く面妖なSF映画「ハイ・ライフ」。昨年のトロント映画祭でプレミア上映された際に大絶賛とブーイングが同時に起きた、というのも分かる。宇宙の密室における深淵な官能劇と言えばいいのか。

 近未来、太陽系をはるかに超えた漆黒の闇に向けて突き進む宇宙船「7」。9人の男女クルー全員が死刑や終身刑を宣告された重罪人で、ある実験台となることを条件に罪を免れていた。

 冒頭、だれもいない宇宙船内で、ギャン泣きする赤ちゃんをあやす乗組員のモンテ(ロバート・パティソン)が、イクメンぶりを発揮する。排泄物はリサイクルし、船内には農園もある。だが、なぜ他にだれもいないのか。密室で繰り広げられた異様な光景が述懐されてゆく。

 美熟女の科学者、ディプス医師(ジュリエット・ビノシュ、もちろん罪人)は、宇宙空間での生殖実験を託され自身も身を投げ出しながら、乗組員男女の“実験”に熱意を燃やす。嫉妬、怒り、欲望などの人間模様が宇宙の密室で炙り出されるが、モンテだけが不思議と禁欲的だった。

 70歳の名匠、クレール・ドゥニ女史が挑んだ初SFは性と生の根源を問う哲学的な映像。先の読めない展開には、もやもやする。いま話題のブラックホールがカギを握る時宜を得た作品ともなった。エンドロールの心地良い音楽を聴きながら、何が言いたかったのか…と思索にふける余韻を楽しみたい。全国で順次公開中。(中本裕己)

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