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【中本裕己 エンタなう】柄本明と2人の息子がみせる“不思議な親子鷹” 映画「柄本家のゴドー」

 NHK連続テレビ小説「なつぞら」がめっぽう面白い。戦災孤児のヒロイン、なつを演じた子役(粟野咲莉)の涙を誘う演技に始まって、思春期に成長した広瀬すずの純朴が光る。亡父の戦友に引き取られ、北海道・十勝で農業高校に通うなつは国語教師が顧問を務める演劇部に誘われる。台本棒読みのなつに、「自分の魂を作って演じるしかないんだ!」と叱責するのが教師役の柄本佑で、これが実に熱い。

 前フリが長くなった。映画「柄本家のゴドー」は、長男・佑と次男・時生の俳優兄弟が、父の柄本明を演出に迎え挑んだ稽古場に64分間密着した異色のドキュメンタリー。兄弟は、「ET×2」という演劇ユニットを組み、2014年にはサミュエル・ベケットの不条理劇「ゴドーを待ちながら」を上演した。父の背が気になる2人は、教えを乞うため17年の公演演出を託したのだ。

 「若い頃、紀伊國屋でベケットやイヨネスコの全集を買ったが、読んだって分かりゃしない」と振り返る明。そして、「分からないことが、分かった」という今の境地。それが息子達にどう伝わるか。歌舞伎役者や落語家、力士の“父子鷹”とも異なる、ふわっとした不思議な緊張感に包まれている。芸の伝承、ときに笑いが漏れる家族の温かみなど、“柄本家の人々”という一幅の絵のような面白さがある。

 東京・渋谷ユーロスペースで上映中。大阪・第七藝術劇場(6月22日~)など順次公開。 (中本裕己)

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