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【中本裕己 エンタなう】令和版“男女5人夏物語” 正解なき恋の形に引きこまれる映画「愛がなんだ」

 角田光代の濃密な片思いの小説を、恋愛映画の名手、今泉力哉監督が映画化した「愛がなんだ」(公開中)。令和版「男女5人夏物語」のようなものかと、軽い気持ちで見始めると、「正解のない恋の形」に引きずりこまれていた。

 猫背でひょろひょろのマモちゃん(成田凌)に出会い、恋に落ちたテルコ(岸井ゆきの)。会社の電話は取らないのに、マモちゃんの着信には秒速で対応して、さっさと退社。友達以上恋人未満のような“都合のいい女”扱いを受け、会社をクビ寸前になっても、めげないし、泣かない。

 ケナゲな女の悲恋物語かと思うと、さにあらず。マモちゃんの気持ちが、ガサツで愛煙家のすみれ(江口のりこ)に傾いても、ひたすら追い続ける。ストーカーを超えた女の執念? 「愛がなんだ」と喝破するテルコの表情に凄みすら。

 テルコの友達、葉子(深川麻衣)を追いかけるナカハラ(若葉竜也)は、女王様状態の葉子のセフレに甘んじながら、思いを打ち明けられず涙ぐむシーンも。全般を通じて、男の弱さ、薄っぺらさが際だって見えるのが気がかりだが、これが現代のリアリティーか。

 彼らを母の立場から見守る筒井真理子や、バイト先の片岡礼子らのオトナ目線に安らぎを感じるのも束の間。男女5人それぞれの胸中を深くえぐる後半のモノローグは見応えがあった。

 岸井は、デビュー間もない頃の宮崎あおいをほうふつさせる怖さとかわいさが光る。

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