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【中本裕己 エンタなう】老老離婚の危機を“ニャ~”と見届ける黒猫 映画「初恋~お父さん、チビがいなくなりました」

 男は外で仕事して、女は家を守る。そんな2周ぐらい時代遅れの亭主関白爺さんを藤竜也、長年連れ添ってきた妻を倍賞千恵子が演じる映画「初恋~お父さん、チビがいなくなりました」(公開中)は、見終わったあとでじんわり余韻がしみてくる。

 人生の晩秋。子らは独立し、勝(藤)と有喜子(倍賞)夫婦は、老猫のチビと平穏に暮らしていた。勝は週に何度か勤務する以外は、妻が作った弁当を持って日がな一日将棋道場へ。帰宅すれば靴、ズボンは脱ぎっぱなしで、「風呂!」「メシ!」。甲斐甲斐しく世話をやく有喜子の世間話には無関心な素振りだ。

 ある不安から、有喜子は娘の菜穂子(市川実日子)に、「お父さんと別れようと思っている」と打ち明ける。その直後にチビが失踪、ひと騒動起きる。

 老老離婚の危機に、2人の馴れそめを振り返る“昭和の恋”が効果的に挿入され、意外な過去が明かされる。これが遺作となった星由里子が演じる妻の旧友も絡んだ三角関係(?)のロマンスも見もの。仕事にやりがいを見つけ、生涯独身でもいいと決めている娘に両親の不器用な決断はどう映ったか。そして、だれもが直面する“老い”を、すべて見透かしたような黒猫チビの名演技。ニャーニャーとセリフは多く、脳内で翻訳しながら見る楽しみがあった。

 原作は西炯子の人気漫画。上岡龍太郎を父に持つ小林聖太郎監督がていねいに描く。(中本裕己)

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