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医療ジャーナリスト・富家孝氏、安楽死問題にメスを入れる椎名桔平主演ドラマに期待

WOWOW「連続ドラマW 神の手」 WOWOW「連続ドラマW 神の手」

 医療ドラマ全盛の今、触れられるケースが少ないのが終末期医療における安楽死の問題だ。6月23日午後10時よりスタートするWOWOW「連続ドラマW 神の手」はその問題に真っ向から挑む。放送を前に、医師で医療ジャーナリストの富家孝氏にドラマへの期待と安楽死問題について語ってもらった。

 「超高齢化や医療費問題などを背景に、安楽死はいま国民に最も提起しなければならない問題の1つ」と富家氏は言う。

 本作は、現役医師である久坂部羊のベストセラー小説が原作。がん患者を安楽死させ、渦中の人物となる主人公・白川泰生を椎名桔平が演じる。共演は、杉本哲太、鈴木砂羽、北村有起哉、星野真里、坂井真紀、近藤正臣ほか。監督は映画『キセキ-あの日のソビト-』『泣くな赤鬼』の兼重淳、脚本は田中洋史と幸修司が務めている。

 腕利きの外科医・白川泰生のもとに21歳の古林章太郎(葉山奨之)が診察に訪れる。診断結果は肛門がん。がんの進行による耐え難い痛みから、患者も看病する伯母の晶子(坂井)も安楽死を懇願。白川は苦悩の末、安楽死処置を施すが、患者の母でジャーナリストの康代(鈴木)から告発を受けてしまう。安楽死法案成立が現実味を帯び、白川は安楽死をめぐるマスコミ、世論、政界をも巻き込む大きな渦にのまれていく。

 「『延命』の名を借りた『過剰診療』が指摘される一方で、病院死率が約80%と世界でも群を抜いて高く、病院はパンク寸前。さらに、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達する事で介護・医療費などの高騰が懸念される2025年問題を考えても、安楽死問題の解決は急務と言えます」(富家氏)。病院死の多さに対して国は、地域における「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の5つのサービスを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」を2012年に確立した。「これは“看取り場所を病院から在宅へ”ということ。つまり、国も延命治療をやめさせる方針をはっきりと打ち出したわけです」

 ドラマで描かれるのは21歳の若者の安楽死。高齢者のそれとはまた少し違った視点になる。それをどうとらえ、どう考えるか。世代を問わず、自分の“死に方”について考えるきっかけを与えてくれるドラマになるだろう。

ドラマでは患者、家族の治療の苦しみがリアルに描かれる ドラマでは患者、家族の治療の苦しみがリアルに描かれる

 「日本は世界をリードする長寿国。しかしその実、寝たきりの人が200万人を超えています。人はいつか必ず死ぬから人生を大事に生きようとするのであって、無理に生かされることにどれだけ喜びを感じられるでしょう」と、富家氏は、今の日本が抱える矛盾を訴える。「そういう意味でも安楽死は、人の“死に方”の大きな選択肢の1つ。自分で食事ができなくなりトイレにも行けなくなったら人間は終わり、という欧米人の潔さにも大いにならうところがあると思います」という。

 安楽死は尊厳死とも言う。ドラマのテーマは人間の尊厳とは何か、死とは何かを視聴者に問うものだ。「自分の“死に方”を元気なうちに考える人はそう多くはないでしょう」と富家氏は言う。「考えたとしても、ピンピンコロリで逝けたらいい、というぐらい。ましてや、安楽死の選択など、ほとんど思いが至らないと思います」。だからこそ、ぜひこのドラマを勧めたいという。「そして、自分がどういう死に方をしたいかということを 家族と話してみる機会になればなおさらいい」という。

 「安楽死には過剰診療や医療費の問題が密接に絡んでくる」という富家氏。ドラマが進行していくうちに、そうした日本の医療を取り巻くさまざまな問題も浮き彫りになってくる。スーパードクターの“神の手”を描く医療ドラマは多いが、延命させる手が“神の手”なのか、安楽死させる手が“神の手”なのかを視聴者に問いかけてくるのが本作だ。

 「初回から安楽死がストレートに描かれ、とても見ごたえがありました」と振り返る富家氏は「患者が痛みに悶え苦しむ様も非常にリアルで、安楽死もやむを得ないと思わせられます」と話す。

 今の日本では、医療上の積極的安楽死について法律で明確に容認はされていない。しかし、患者本人の意思表示があれば、医療行為を中断することができるケースはあり、本作でも意識障害が表れている患者からその意思が読み取れたかどうかが1つの論点になっていく。「結局そこがあいまいだから告発に至ってしまう。私はそれほど遠くないうちに積極的安楽死は認められると思っていますが、国にはまず、患者本人による事前申告の制度を早急に確立してもらいたい」と富家氏。「このドラマが、視聴者にそういうことを改めて考えさせ、世の中に問題提起するきっかけになってくれるといいですね」

富家孝氏 富家孝氏

 「連続ドラマW 神の手」は、6月23日(日)より毎週日曜午後10時放送。全5話で、第1話は無料放送。23日午後11時から30日午後10時までYouTube内の「WOWOWofficial」で第1話を無料公開。

 お問い合わせはオフィッシャルサイト(https://www.wowow.co.jp/dramaw/kaminote/)、もしくは、WOWOWカスタマーセンターTel 0120・808・369(午前9時~午後9時)。

【プロフィル】富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営の後、「ラ・クイリマ」代表取締役。早稲田大学講師、日本女子体育大学助教授などを歴任、新日本プロレスリングドクター、医療コンサルタントを務める。『不要なクスリ 無用な手術 医療費の8割は無駄である』(講談社現代新書)、『ブラック病院』(イースト・プレス)など著書計67冊。

(提供:株式会社WOWOW)