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【中本裕己 エンタなう】82歳、ロバート・レッドフォードの軽やかな引き際 映画「さらば愛しきアウトロー」

 何とズルい引き際か。82歳のロバート・レッドフォードが自ら俳優生活の最後に選んだ作品は、実在の銀行強盗を演じた「さらば愛しきアウトロー」(公開中)。繰り返し逮捕され、16回も脱獄した実在の人物フォレスト・タッカーがモデルである。

 1981年、テキサス州の銀行。青いスーツを着た老紳士は女性行員に上着の中の拳銃をチラっと見せ、「金を入れてくれ」と微笑みかけるとバッグを差し出した。こんな手口で、街から街へと行員を手玉にとり、大陸で強盗行脚を続ける。

 声は荒らげないし、銃は一度も撃たない。周到な準備と軽やかな“脅し”に、被害者側も「いい人そうに見えた」と、うっとり振り返る。金を盗まれる以上に、心を盗まれている。これって、年をとっても、どうすればモテるかを指南する恋愛講座なのではないか。

 正体を知らないまま行きずりの恋に落ちるシシー・スペイセク演じる未亡人。ダイナーのボックス席で徐々に距離を詰めるタッカーの話術も粋。万事明るくふるまうタッカーだが、ほとんど強盗と脱獄だけの人生には当然、悔いも憂いもある。「こんな生き方しかできないオレ」の開き直りが卑しく映らないのは、二枚目キャラのなせる技だろう。

 ハリウッドの今を生きるケイシー・アフレックが刑事役。タッカーを追うことで、けだるい日々が活き活きと変わる。役を超えた憧れの目線には、世代交代も込められている。(中本裕己)

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