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【昭和歌謡の職人たち 伝説のヒットメーカー列伝】編曲家・星勝“ニューミュージック時代の革命家” 井上陽水「心もよう」「断絶」など手掛ける (1/2ページ)

 ベートーベンの「運命」に匹敵する衝撃的なイントロが、井上陽水の「心もよう」(1973年)。アコースティックギターのアルペジオからダダーンとくる。拍子の裏はフェイントみたいなものだ。陽水の声も歌い方も悲壮感と必死さが相まって迫ってくる。

 まさに編曲、アレンジが注目された。編曲家の名は星勝さん。ニューミュージック時代の到来はこの革命的なアレンジからともいえる気がする。

 戦後の歌謡曲は旋律が主体でバックはバイオリンが全体を包んでくれて、リズムはほとんど聴こえなかった。やがて、洋楽を聴いて育った若者はビート感、リズムに敏感になっていった。

 80年代に入ると、演歌歌謡の制作スタッフも異口同音にアレンジ、アレンジと言い出した。骨組み素材が大切なのが基本であり、旋律がしっかりしていなくてはならない。ただ駄作でもアレンジ次第で、なんとかなるだろうと本末転倒の輩も増えてきた。

 星さんはグループ・サウンズ、モップスのギタリスト、ボーカルで活躍。そのアレンジはアコースティックなギターサウンドとロックのリズムとの合体の始まりといえる。星さんは当初、譜面もよく理解していなかったが、クニ河内さんに助言をもらいながら独学したという。

 ロック系はヘッドアレンジといって、コードだけの譜面でプレーヤーに委ねることが多かったが、アレンジデビューとなった陽水のアルバム「断絶」(72年)ではきめ細かく各楽器の譜面を書いた。陽水の制作担当者の縁で小椋佳のアレンジャーにもなる。2人はビッグセールスとなり、星勝の名も知れ渡ることになる。

 繊細でナイーブなフォークの2人の世界と、サイケデリックなロックをやっていた星さんが激しく火花を吐きながら融合したのである。

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