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【帰ってきた「みんなの寅さん」】和尚に扮した寅さんと観客が「笑いの共犯関係」 (1/2ページ)

 「男はつらいよ」シリーズは、多幸感にあふれています。おいちゃん(下條正巳)、おばちゃん(三崎千恵子)、さくら(倍賞千恵子)が旅先の寅さんを想い、寅さんは故郷に残してきた家族を想っています。久しぶりに寅さんが帰ってくれば、互いの想いが強すぎて、結果的に「それを言っちゃおしまいよ」と大げんか。寅さんは、柴又にいるとつい家族に甘えてトラブルになりますが旅先では意外と「役に立つ男」でもあります。

 備中高梁に義弟・博(前田吟)の父の墓参に行った寅さん。菩提寺の娘・朋子(竹下景子)に一目ぼれ。住職・泰道(松村達雄)としこたま飲んで、住職が二日酔い。肝心の法事ができなくなり、ならば「門前の小僧習わぬ経を読む」と寅さんが住職代行を買ってでます。この上なく面白い展開ですが、柴又帝釈天門前で育ったとはいえまったくの素人。なのに寅さんの話は「和尚より面白い」と大評判。

 それもそのはず「天に軌道があるごとく、人それぞれ生まれ持ったる運命があります」と易断本の啖呵(たんか)を鮮やかに語ったのです。想い人の朋子には感謝され、住職は良き相談相手ができてご満悦です。第32作『口笛を吹く寅次郎』はいつ観ても何度観ても楽しい作品です。

 やがて博の父の三回忌の法要が行われることになり、何も知らないさくらと博、そして息子・満男(吉岡秀隆)が高梁にやってきます。ここからはシリーズ最高のおかしい場面となっていきます。さくらがいつ、寅さんに気づくか? 観客と寅さんの間に共犯関係のような気持ちが湧き、その瞬間がやってきます。

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