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【自決50年 令和にみる三島由紀夫の世界】賛否両論承知の上「シャレタ小説を書きたかっただけ」 「美徳のよろめき」(1957年) (1/2ページ)

 これも三島由紀夫のベストセラー小説で1957年の『群像』に連載された。テーマが不倫で、前年の『金閣寺』とは倫理観があまりにも異なっており、かえって注目を浴びることとなった。

 もちろん賛否両論があった。評論家の北原武夫は谷崎潤一郎との共通性を見いだし「自分の力量を心行くまで発揮し、自分の技能を楽しんでいる」と述べた。一方、女性作家陣、とりわけ佐多稲子や平林たい子、円地文子らからはヒロインが薄っぺらで男性も魅力がないとこきおろされた。

 前後して石原慎太郎の出世作『太陽の季節』がやはり倫理観に欠けると批判されたのも似ている。こちらは「太陽族」という言葉がはやったが、「美徳のよろめき」も「よろめき」という言葉がはやり、今でも「よろめきドラマ」と使われる。現在だったら流行語大賞間違いなしだろう。

 もちろん三島自身も「何もムキになって書いたもんじゃないんですがね。シャレタ小説を書きたかっただけ。だけど日本ではたちまちやられるわけで『金閣寺』と比べてどうだとか、こうだとか-」と批判は初めから承知していたようだ。

 主人公の節子(月丘夢路)は元華族でお嬢さま育ちの28歳。実業家で金はあるが上品とはいえない男、倉越一郎(三國連太郎)と結婚した。厳格でつつましい生き方が身上の節子には菊夫という男の子がいて、平凡だが幸せに暮らしていた。

 節子にはかつて付き合っていた土屋(葉山良二)という男がいて、偶然レストランで再会し、自分の中の官能的な欲求を知る。土屋と密会するたび、道徳観念から解放され肉体の喜びに溺れてゆく節子。しかし密会で共同戦線を張っていた友人の与志子(宮城千賀子)が別れ話のもつれから愛人に重傷を負わされたことを知り、節子は土屋と別れる決心をするのだが…。

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