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【ぴいぷる】作家・金原ひとみ パリと東京「2つの世界で生きる」 『『パリの砂漠、東京の蜃気楼』を上梓 (3/4ページ)

 「パリの日本人に聞けば『ある、ある』といった話、みんな同じようなことで苦労している。でも慣れてしまえば、まぁそういうもんかなって。玉ネギはしっかり確かめてから買うようになりましたから(苦笑)」

 それに比べると、日本の役所も企業も、ずっと丁寧で、行き届いている。遅くまで女性1人で飲んでいても安全なことや、パリにはない24時間営業のファミレスで深夜に原稿を書くことだってできるのだ。

 では、東京(日本)のイヤなところは? と問うと、すかさず「横暴な男性」と答えた。コンビニの従業員に乱暴な言葉を投げつけるおじさん。カフェで原稿をパソコンで打つ音が「うるさい」って突然、怒鳴られたこともあった。

 「特にひどいのは中高年の男性ですね。敬語ぐらい使えないのかなって。ああいうのを見るとドキッとするんです」

 ただ、パリで暮らしたことで、少しは割り切れるようになったという。

 「みんなが同じ価値観で生きていると思うから腹も立つ。『延長線上にない人』と割り切ると怒りも減るんです。パリでは、まるで“エイリアン”のように別のシステムの人でも気にしませんから」

 本作には、不登校になったり、分かり合えない母親との葛藤など過去の「自分の姿」も赤裸々に綴られている。最年少で芥川賞に輝いたデビュー作『蛇にピアス』を読んだ母親から電話で「セックスシーンを減らせないの?」と諭されたエピソードは衝撃的だ。

 「『表現者の命(文章)』に対して、世間体を持ち出して来る母親に頭がフリーズしてしまいました。そんなことを『本気で言えちゃうんだ』って。(母親との関係も)今はマシになったと思います。それこそ『別の価値観で生きている』と割り切ることでラクになりましたね」

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