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【みうらじゅん いやら収集】いやぁーお世話になりました… AVアイドル・菊池えりさん

 “ザ・スパイダーズ”の解散後、メンバーだったマチャアキは『さらば恋人』。そして井上順が『お世話になりました』という歌をヒットさせた。僕が童貞をこじらせ始めた中学生の頃だ。どちらも大好きな曲で、初老になった今でもつい、口づさんでいることがある。

 先日、ふと思ったのだが「お世話になりました」って言葉が、歌詞に出てくる下宿屋のおばさんとか、目上の人に対しての感謝以外でも使われるようになったのは、あの歌以降ではなかったかということ。

 それは男に限っての使い方であるが、「いやぁーホント、菊池えりさんには大変、お世話になりましたよ」ってやつ。

 感謝を込めて言っているのは同じだけど、少しニュアンスが違うのはそこに照れ臭さがあること。

 「ま、言えばAVアイドルの先駆けじゃないですか菊池えりさんって」

 「いやぁ、私もね、80年代は随分、お世話になったクチでしてね」

 「それはそれは、気が合いますなぁー。ま、一杯」、「私の場合はまだ、彼女が比野由美子や、秋本麻衣なんて名乗ってた頃からの」、「いやぁー、それはお見それしました大先輩!ま、もう一杯」、「昨今、何だか断捨離っていうんですかね、物を捨てることがブームになってますが、やっぱ、かつて一度でもお世話になったものって、そう易々とは捨てれませんな」、「同感です!」

 VHS時代のものからDVD、それに彼女の写真集(まだ、数冊あるがパソコンが使えず入手できず、悔しい思い)。

 「お世話になりました」と、言うくせにまだ、お世話になれるんじゃないかと厚かましく思ってる自分。そりゃ捨てられるわけがない。

 20年以上前になるけど、彼女が勤める六本木のバーへ行ったことがある。その時つい嬉しさ余って出た言葉が、「お世話になってます!」。現在進行形だった。

 ■みうら・じゅん 1958年2月、京都市生まれ。イラストレーター、漫画家。エッセイストとしても知られ、97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞した。近著に『ラブノーマル白書』(文春文庫)、『みうらじゅんの松本清張ファンブック「清張地獄八景」』(文芸春秋)など。新刊『ひみつのダイアリー』(文春文庫)が発売中。

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