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【あの人も愛した 京ぎをん浜作】初代・森川栄の包丁の技をフィルムに残した吉村公三郎監督 (2/2ページ)

 以来、吉村は浜作の初代主人、森川栄氏と親交を結び、京都での撮影では初代が風俗考証を協力した。吉村の代表作『偽れる盛装』(51年)は古い因習の残る京都の花街で、京マチ子演じる芸妓が美貌を武器に男を手玉に取る。この中で進藤英太郎演じる料亭「伊勢浜」主人のモデルは浜作の初代であり、当代によると映画で進藤が身につけるベストやメガネはすべて初代のものだそうだ。祇園町の本店でのロケでは、映画全盛期ゆえスタッフも100人を数え、警察は冨永町通を通行止めにした。初代は、包丁を握る場面では手のアップで出演もしていて、伊勢エビを鮮やかにさばくクローズアップがたっぷりある。

 食通の吉村は、どうしてもその包丁の技をフィルムに残しておきたかったのだろう。やはり京都の味を知っている人にしか撮れない絵だ。おかげで初代のさえわたる技を今も見ることができる。

 ■大野裕之(おおの・ひろゆき) 脚本家、演出家。1974年、大阪府生まれ。京都大学在学中に劇団「とっても便利」を旗揚げ。日本チャップリン協会会長。脚本・プロデュースを担当した映画に『太秦ライムライト』(第18回ファンタジア国際映画祭最優秀作品賞)、『葬式の名人』。主著に『チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦』(岩波書店)など。

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