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【映画三昧の独り言】最終回 「初恋のきた道」 チャン・ツィイーが放つ「生命が輝く」美しさ (1/2ページ)

 「生命が輝く」美しさというものがあります。生き物としての生きる喜びが爆発する姿と言ってもいいでしょう。それは、金が儲かったとか、地位や名誉を得たとか、家や高級車を買ったとかというような喜びとは違う、もっと本能的な、根源的な、純粋無垢な歓びの瞬間といえるかもしれません。そんな「生命が輝く」ような笑顔をフィルムに焼き付けた映画があります。中国映画「初恋のきた道」(1999年、チャン・イーモウ監督)です。

 中国の寒村で教師をしていた父・チャンユーが亡くなったため、都会で働く一人息子のユーシェンは帰郷します。学校の改築のための金策で町へ向かい急死したチャンユーを、ユーシェンの母・ジャオディは昔のように棺を担いで村へ連れ帰りたいと言い張り(そうすれば死者が道に迷わないのだそうです)、ユーシェンや村の人々を困惑させるのでした。ユーシェンは、そんな母と父の若き日の恋に思いを馳せます。

 初めて村にできる学校の梁(はり)に巻く赤い布を織る役目(新築の際の土地の風習で、村で一番美しい娘が担う仕事)を頼まれた若き日のジャオディ(チャン・ツィイー=写真)は、子どもたちに教えるために村へやってきた若い教師・チャンユー(チョン・ハオ)にこれまで味わったことのない心のときめきを感じます。そして、学校建設を手伝う彼を見るため、家からは遠い、学校近くの古井戸へ水を汲みに行ったり、建設作業をする村の男性たちのために女性たちが作る弁当の中から、自分が心を込めて作ったものをチャンユーが食べることを念じたりと、ジャオディの初々しい恋心が、美しい山村の秋の自然の中、育まれていきます。

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