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【中本裕己 エンタなう】隣人を愛することの難しさ描く 騒音おばさんがモチーフの映画「ミセス・ノイズィ」

 汝の隣人を愛せよ、と言うが、そうはいかないのが渡る世間だろう。もう15年も前になる奈良の引っ越し騒音おばさん事件がモチーフの映画「ミセス・ノイズィ」。ありそうで考えもしなかった日常が疾走感をもって丁寧に描かれている。

 目下スランプ中の若手作家で、幼い娘を抱える母親・吉岡真紀(36)。夫と一家3人で引っ越したマンションで、ベランダからけたたましい音が。隣の住人、若田美和子(52)が、連日早朝から布団を叩いていた。耐えかねた真紀は、隣人による嫌がらせの数々を小説のネタにすることに。SNSを通じて評判を呼ぶが…。

 隣人とのケンカが、夫婦ゲンカになり、マスコミを巻き込んだ騒動になる。生々しいドキュメンタリーのように突き進む物語は、前半“被害者”に見えた篠原ゆき子演じる主人公が、後半でガラリと変わる。結末が早く知りたくなる小説のように天野千尋監督によるオリジナル脚本は力強い。コロナ禍で人との関係が希薄になる中、肉声で「ひと声」掛け合うことの大切さを痛感させられる。

 娘役は、人気ユニット「Foorin」で“ちせ”として活躍する新海誠監督の娘、新津ちせ。田中要次、洞口依子、風祭ゆきらが脇を固める。

 大型作品に乏しく正月映画らしい雰囲気がない年の瀬だが、たまったストレスの持って行き場がない人こそ見るべき作品かもしれない。

 順次、全国公開中。(中本裕己)

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