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【中本裕己 エンタなう】元殺人犯のその後を演じて光を放つ役所広司 映画「すばらしき世界」

 実在のモデルをもとに、長い刑期を終えた元殺人犯の男を描く佐木隆三の小説『身分帳』を映画化した「すばらしき世界」(公開中)。原作に惚れ込んだ西川美和監督の脚本により、主人公の三上を演じる役所広司が、この世の生きづらさと、愛おしい人間の情を一身に背負ってオーラを放つ。

 旭川刑務所を出た三上は、身元引受人の弁護士、庄司(橋爪功)とその妻、敦子(梶芽衣子)に迎えられる。時代の変化に戸惑いながら東京の下町でカタギとして生きることを誓った。

 一方、テレビ制作会社を辞めた小説家志望の津乃田(仲野太賀=中野英雄の次男)と、やり手のTVプロデューサー、吉澤(長澤まさみ)が三上に近づく。

 不良少年時代からの三上の行動が細かく記された裁判資料の「身分帳」をもとに、番組取材する津乃田は、壮絶な過去に嫌な寒気を覚える。何事も一本筋を通さないと気が済まず、カッとなると声を荒げ、すぐ手が出る…。

 一方で、子どものように無邪気で、懸命に更正しようとする三上の姿が周囲を変える。厳格なケースワーカー(北村有起哉)や、色眼鏡で見ていた町内会長のスーパー店長(六角精児)らとも情を通わせるようになってゆく。

 元ヤクザを受け入れない不寛容な社会を単純に皮肉る作品ではない。同調圧力の中、頬かむりしながら生活する我々こそ窮屈に思えてくる。エンディング、三上が見つめる先にある「すばらしき世界」に泣けてきた。(中本裕己)

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