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【中本裕己 エンタなう】誰もが避けられない“いつかの明日”に希望 映画「痛くない死に方」

 できれば病院ではなく、自宅で最期を迎えたい。そして、苦しまずにあの世に行きたい。そんな思いをこめた映画「痛くない死に方」は、在宅医と患者、その家族のあるべき関係を描き、だれもが避けて通れない“いつかの明日”に、ちょっと希望が持てる物語だ。

 若い医師の河田(柄本佑)は日々、在宅医療と格闘しながら肺がんの末期患者、井上(下元史朗)を担当する。娘の智美(坂井真紀)は、痛みを伴う延命治療の入院ではなく、“痛くない在宅医”を選んでいた。だが、河田は処置を見誤り、患者は苦しみながら死ぬ。智美に責められた河田は、在宅医の先輩、長野(奧田瑛二)から、「人間を好きになれ」と励まされ、不自然な死に“溺れない”術を学ぶ。

 2年後。同じく肺がん患者、本多(宇崎竜童)の長い“看取り”を経験して大きく成長する。

 悲惨な例を再現する下元と、見事に枯れてゆく宇崎の演技がリアリティーにあふれている。演技派の二枚目としてピンク映画を席巻した下元のオムツ姿が突き刺さり、病床で川柳を詠む宇崎にも嘘くささがない。

 モチーフとなったのは、在宅医療のスペシャリスト、長尾和宏医師(小紙金曜連載)のベストセラー『痛くない死に方』『痛い在宅医』。71歳の高橋伴明監督は、情に訴えず、お説教を排除して、淡々と、ときに明るく死を描ききった。

 東京・シネスイッチ銀座で上映中。大阪・テアトル梅田(3月5日から)など順次全国公開。(中本裕己)

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