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【元文春エース記者 竜太郎が見た!】静かに去って行った田中邦衛さん 素朴で純粋な面影は私たちの記憶に生き続ける (1/2ページ)

 「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」

 『北の国から’84夏』(フジテレビ系)、閉店間際のラーメン屋。丸太小屋が火事になった原因を友人になすりつけた純が自分の過ちを涙ながらに告白する。黒板五郎は怒ることなく、自分もまた悪かったと訥々と語る。そんな純、蛍、五郎に、店員がもう帰れといわんばかりに食べかけのラーメンを片付けようとしたそのとき、五郎が怒鳴る。純の心の成長や五郎の父親としてのあり方を見せてくれたこの印象的な場面は、多くの人に感動を与えてくれたのではなかろうか。

 ドラマ『北の国から』、映画『若大将』シリーズなどで知られる俳優、田中邦衛さんが3月24日、老衰のため亡くなった。88歳だった。すでに家族葬をすませ、4月2日、遺族は最期について「家族に見守られながら、安らかな旅立ちでした」とコメント。田中さんは最後まで前向きに生きる気力と、周囲への感謝を持ち続けていたという。葬儀は、亡くなった後は静かに見送ってほしいという故人の希望に沿った。お別れの会、しのぶ会も行わない。

 田中さんは大学を卒業後、故郷の岐阜での代用教員を経て、難関を突破し俳優座に入団。同期には井川比佐志や水野久美がいる。映画『網走番外地』シリーズで高倉健の舎弟をコミカルに演じ、菅原文太主演『仁義なき戦い』シリーズではそれまでのイメージを一新するずる賢いやくざを演じた。山田洋次監督の映画『学校』では、働き詰めで学校に行けず50代まで文字の読み書きができず夜間学校に通う肉体労働者イノさんを熱演。しかし2010年公開の映画『最後の忠臣蔵』へ出演して以降、表舞台から遠ざかっていた。

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