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【中本裕己 エンタなう】39歳・尾野真千子がピンサロ嬢役に体当たり コロナ禍描く映画「茜色に焼かれる」

 39歳の尾野真千子が4年ぶりの主演映画「茜色に焼かれる」で、弱者の立場からコロナ禍の生きづらさをぶつけた。めげずに気を吐く姿に、令和の肝っ玉母さんを見る思いがした。

 誰もが出口のない毎日に、もがいている。その空気感を石井裕也監督が投影する主人公の田中良子(尾野)は、これでもか、というほどの不幸を背負う。ロックミュージシャンの夫(オダギリジョー)は、85歳になる元官僚の“上級国民”にはねられ7年前に事故死した。元官僚は認知症で逮捕もされず92歳の天寿を全う。その葬儀に現れた良子は「嫌がらせか」と遺族に追い出された。

 謝罪の言葉がない加害者の賠償金は受け取らず、13歳になる息子の純平(和田庵)を抱え、脳梗塞の義父を老人ホームに入居させている。経営していた小さなカフェはコロナで破綻していた。

 場面ごとに象徴的な金額が登場する。良子の花屋のバイト(時給930円)。老人ホーム入居費(16万5000円)。市営住宅(2万7000円)。亡き夫が外でつくった娘の養育費(7万円)。そして、息子に黙って働いているピンクサロン(時給3200円)。このピンサロで店長役の永瀬正敏が実に陰影のある良い演技をする。

 学生時代から芝居が得意な良子。ピンサロのやっかいな客にも不平を言わず、折りに触れ「まあ頑張りましょう」と、“我慢”を演じ続ける。終盤、冷たい社会に鉄槌を下し、息子との平穏を取り戻す尾野の凄みに、見ていて笑みがこぼれた。(中本裕己)

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