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【中本裕己 エンタなう】「在宅医」吉永小百合が終末期の患者と向き合う 映画「いのちの停車場」

 そこには役柄と同化した“吉永小百合”という女医がいた。122作目となる主演映画「いのちの停車場」(公開中)。何とこれが初の医師役だというが、観る者の心をすーっと穏やかにする演技がクスリとなった。

 東京の救命救急センターを率いていた医師・白石咲和子(吉永小百合)は事故の責任を取り、退職して郷里の金沢へ。老いた父(田中泯)が出迎えた。町の小さな「まほろば診療所」で在宅医として再出発することになり、初対面の院長・仙川(西田敏行)が言う。

 「医者には患者を安心させる顔と、そうじゃない顔があります」

 咲和子は、まさに前者だといい、そこが映画の舞台挨拶で「スクリーンから飛沫はとびません」と劇場内の安全性を呼びかけた吉永の柔和な表情と重なった。

 在宅医の現場は、救命救急とは別の修羅場でもある。ゴミ屋敷と化した自宅で疲れ切った老老介護の夫婦、家庭を顧みず出世街道を歩んできた元エリート官僚や小児がんで難治療を繰り返してきた少女らが訪問先。安心した顔で「人生の仕舞い方」と向き合ってもらうにはどうすればいいのか。処方箋はない。

 咲和子と同行して、きびきびハツラツと働く看護師を演じる広瀬すずの笑顔は、不安に満ちた作品のもうひとつの安心材料だ。吉永から広瀬へ、正統派美人の系譜から“安心”のバトンが渡るかのような場面がある。

 ラスト。父の病と向き合い、医師から娘の顔に返る壮絶な場面は必見。(中本裕己)

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