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心に響くこだわりの「せりふ」 映画「ベル・エポックでもう一度」 (1/2ページ)

 何度でも見返したい仏映画の個人的作品に新たな1本が加わった。12日公開の『ベル・エポックでもう一度』。つかみの映像から、設定といい、危ういせりふといい、冷や冷やものだ。種明かしが分かったところで、物語の骨格が見え始める。

 日本映画のパンフレットでは脚本家は「脚本」と表記されるが、この映画では「脚本/台詞(せりふ)」。なるほど「せりふ」へのこだわりが、表記からうかがえる。

 主人公ヴィクトルは、ダメおやじだ。まずそこに好感が持てる。かつては売れっ子イラストレーターとして新聞社で風刺画を描いていたが、お払い箱になった。イラストというスキルは健在だが生かそうとしない。このご時世に、ケータイもない。ここまでプレ現代に徹底すれば、愛すべき人物である。

 「時代遅れで上等!」と同情したくなるが、同情できないのは、精神分析医の妻にもうんざりされていること。家を追い出されてしまう。

 救いの手を差し伸べるのは、映像制作会社を経営する息子。「時の旅人社」なる会社の存在を父に知らせる。

 客の望む時代を体験させるというサービス。映画スタジオのように、巨大な敷地に当時が再現される。言ってみれば、オーダーメードの時空間。オフィスの壁一面にかけられたおびただしい数の時計が象徴的である。「ノスタルジーは商売になる」という登場人物のせりふが的を射ている。

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