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【みうらじゅん いやら収集】グラドルの正体見たり! 印刷工場で会った“知らぬが花”

 “幽霊の正体見たり枯尾花”

 なんて、言うように人ってやつは、その勝手な思い込みで怖がったりもするが、正体を知った後のガッカリぶりを考えると、

 “知らぬが花”

 にしておいたほうが賢明だと、そんな格言が生まれたのかも知れない。

 さて、今回のいやら収集は、人にもよるが、これも知らぬが花とする者が多いだろう。

 僕は一応、というのも何だけど美術大学のデザイン科卒である。それも40年以上、昔の話なので今のデザイン科とは全く、授業内容も違っていると思われる。

 やはり当時はパソコンがなかったことが大きい。印刷というシステムがまだ、活字を組んでいた時代、印刷工場にも授業の一環として訪れた。その時、僕はこの目でハッキリと正体を見たのだ!

 そもそもそれが印刷機種の名称であることは学んでいたし、何も仰天したわけじゃない。

 逆に“だったら、オフドルと呼ぶべきじゃないのか?”と、冷静に思ったくらいだ。それは工場を案内してくれた方が「今はオフセット印刷で行っています」と、言ったから。

 コストの面でいえば断然、オフセットのほうが安くつくのだが、難点はグラビアに比べ、解像度が劣っていたこと。しかし、それもすっかり改善されたというではないか。

 さっきから一体、何の話をしてるかと言うと、世の中がまだ“グラビア・アイドル”(グラドル)などと呼んでるその真の姿は、今やオフセットにお株を奪われた印刷機械の名称であったことだ。ちなみに、その印刷法を発明したのはチェコのカール・クリッチって人。ま、それはいいか。

 同じ美大出身のリリー・フランキー氏と、15年ほど前、まだ、たまに使ってるというグラビア機に会いに行った。僕らにとっては枯尾花どころか、今ではとてもカッコイイ存在だったけどね。

 ■みうら・じゅん 1958年2月、京都市生まれ。イラストレーター、漫画家。エッセイストとしても知られ、97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞した。近著に『ひみつのダイアリー』(文春文庫)など。2021年本屋大賞「発掘部門/超発掘本!」で、著書『「ない仕事」の作り方』(文春文庫)が受賞。リリー・フランキーさんとの共著『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』(新潮文庫)が4月26日発売。

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