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【中本裕己 エンタなう】杉田玄白の“人体解剖”に知られざる秘話 劇団扉座「解体青茶婆」

 エンターテインメントの中でもコロナ禍で、もっとも岐路に立たされているのが演劇だろう。40周年を迎えた劇団扉座が覚悟の初日(6月30日、東京 座・高円寺1)を迎えた。座長の横内謙介は、蘭方医の杉田玄白の人体解剖をめぐる数奇なエピソードを発掘した新作「解体青茶婆(かいたいあおちゃばば)」に生命の尊さをこめた。

 横内は自粛期間を経て今を生きる演劇人だからこそ、「人智を超えた自然の力の恐ろしさとそれに立ち向かってきた人間の歴史、英知や祈り」を描こうと考えたという。学校で『解体新書』は習っても、どうやって遺体を調達し、だれがかかわったかを知る人はいないだろう。

 講談調でテンポのよい時代劇に好奇心と畏敬の念が織りなす舞台は、玄白(有馬自由)の晩年にスポットを当て、『蘭学事始』に真実を書き留めようとする弟子や実娘たちが、腑分け(=解体)の実態に迫る。タイトルの青茶婆(中原三千代)というのは、養育費を目当てに子供を引き取っては殺していた希代の毒婦で、死罪のあと腑分けにまわされる。その青茶婆が、玄白のもとに化けて出るのだが、どうやら目的は恨みごとではないようで…。

 当時、動物の解体や罪人の処刑後の始末を強いられたがゆえに、医者以上に人体の中身に精通していた人々の重要な位置づけや、不条理な差別まで物語は掘り下げる。医学の進歩に貢献した有名無名の人々が生き生きと蘇った。7月11日まで。(中本裕己)

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