直木賞受賞の朝井まかてさん独占インタビュー 複雑な幕末、過酷な投獄生活…最初は書けないと思った

★朝井まかてさん「恋歌(れんか)」講談社1680円

2014.02.02

連載:ブック

 初めての直木賞候補作品となった『恋歌(れんか)』で、見事受賞を射止めた。今月16日の選考会では、時代小説の大御所・浅田次郎さんを唸らせ、選考委員の好評価を得た。大阪在住。54歳。一度帰阪して、再び上京する忙しさの中でのインタビュー。疲れも見せず、柔らかい関西弁で答えてくれた。 (文・竹縄昌 写真・鴨川一也)

 −−同世代の姫野カオルコさん(55)との2人受賞。当日は大阪の留守宅にも取材が入ったそうですね

 「姫野さんは会ってすぐに話しかけてくださって、心丈夫でした。ひとりになった途端、フリーズしちゃいましたけど(笑)。留守宅では夫が電話取材を受けたようですが、私よりよほどしっかり受け答えしてたみたいです(笑)」

 −−本作執筆のきっかけは

 「『小説現代』(2010年1月号)に明治時代の歌人で樋口一葉の師、そして水戸の天狗党・林忠左衛門以徳(もちのり)と結婚した中島歌子に触れた短い文章を書いたのがきっかけでした。編集担当さんがそれを見て、中島歌子を書きませんかと提案してくれたんです。何年も粘ってくれました。ですが私は幕末ものを読むのは好きですが書くのはとても無理ですと、お断りし続けていたんです。あの時代は、背景があまりに複雑で入り組んで見えましたから」

 −−それでも書いた

 「歌子が恋した相手が水戸の人だったから水戸を知りたい、幕末という時代を理解したい。そういうアプローチでしたので、牢獄のシーンを書かざるを得ないことはわかっていました。執筆に腰が引けていたのは、それもあったように思います」

 −−その牢獄のシーンには怒りを感じます

 「私にも憤り、怒りがありました。でも、それを登世(後の歌子)に託したのではなく、牢獄で彼女が感じたであろうことを共に感じ、寄り添うようにして書いた感覚です。刊行後、水戸のある方から、あの争乱はずっと負い目に感じてきたけれども、何もかもをふんわりと包んでもらったような気がするという感想をいただいたんです。書いて良かったと思いました」

 −−今年の執筆は

 「以前から待っていただいている書き下ろしと、短編連作もあります」

 −−新直木賞作家には愚問でしょうが、目指す作家はおられますか

 「作家というより、田辺聖子さんの『ひねくれ一茶』や佐藤愛子さんの『血脈』のような作品が目標です。おこがましいかもしれませんが、いつか必ず挑戦したいです」

 ■あらすじ 明治の歌人で歌塾「萩の舎」主宰・中島歌子の若き日の波乱の人生を中心に描く時代小説。水戸藩の定宿、小石川池田屋の娘・登世(後の歌子)は、投宿していた水戸藩士・林忠左衛門以徳との恋を成就させ、水戸に嫁ぐ。しかし、林は度重なる策謀による争乱に巻き込まれていく。一方、家は水戸藩によって取り潰しとなり、登世は投獄されてしまう。彼女はいったい、何を頼りに生き抜いたのか…。

 冒頭、歌子の高弟の作家・花圃がこれらを記した歌子の手記を発見するところからグイグイ物語に引き込まれていく。

 ■朝井まかて(あさい・まかて) 1959年、大阪府羽曳野市生まれ。甲南女子大卒業後、コピーライターを生業とするが、2006年、一念発起して、小学生のころから夢に抱いていた小説執筆を決意、大阪文学学校の門を叩く。08年、同校の課題作として、ライフワークである園芸を素材に執筆した時代小説『実さえ花さえ』で第3回小説現代長編新人賞奨励賞受賞(同作は講談社文庫で『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題)。13年、『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞2013受賞。他に、『ちゃんちゃら』『すかたん』『先生のお庭番』など。

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

毎日25分からのオンライン英会話。スカイプを使った1対1のレッスンが月5980円です。《体験無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。