直木賞受賞! 姫野カオルコさん独占インタビュー 「同じ作品でも『雑誌』『小説』は別物」 『昭和の犬』幻冬舎1680円

★姫野カオルコさん『昭和の犬』幻冬舎1680円

2014.02.09

連載:ブック


姫野カオルコさん【拡大】

 デビューから25年、5回目の直木賞候補で受賞を果たした。選考委員の浅田次郎さんは、「直木賞をねじ伏せた」とまで評し、その力量を認めた。ジムで発表を待っていたそうで、帝国ホテルの記者会見にはジャージ姿で出現。当日はカメラの注文にもタオルを振り回すなどのノリの良さで応じたものだが、今回の単独インタビューでは、「先生と呼ぶのはやめて下さい」と言いつつ、訥々と話してくれた。 (文・竹縄昌 写真・鴨川一也)

 ──5回目の候補でした

 「発表日のことは考えないようにしていました。他の候補作のことも知らないように注意したぐらいです」

 ──雑誌「パピルス」に連載した作品での受賞ですね

 「いえ、これは実質書き下ろしなんです。雑誌には9回連載して、9回目を書きながら、すでに単行本の始まりを考えていました。エピソードとして連載を使った部分もありますが、編集さんからもらったデータは全部削除しました」

 ──なぜそのようなことを

 「雑誌連載はあくまで雑誌に一回限りで読むもので、小説は一冊の本として読むものという考えがあって、その目的に合わせたいんです。連載にする時は、それは使わないで一切粉々にして書き直す確率が高いです。理由が違う場合もありますが、これまでほぼ全部そうしてます」

 ──ファンは2度おいしいですね

 「コアなファンは混乱するので、雑誌は読まないって言ってます(笑)」

 ──自伝的小説ですが

 「でも、登場する犬は虚実ないまぜです。ただ猫のシャアが出る第1章はほぼ事実の通りなんです」

 ──各章に“ララミー牧場”“宇宙家族ロビンソン”と、昭和のテレビ番組のタイトルが付けられています

 「あれは私のお気に入りの番組というわけではなく、その章は、その番組が放映されていた時代なんです。だから“奥様は魔女”みたいな放送期間が長い番組は入っていません」

 ──読者にメッセージを

 「実は心配していたんです。犬が誘拐されるとか、病気になるとか、事件は起きないし、“ボーイ・ミーツ・ガール”があるわけではないから、読む人が退屈するんじゃないかって。でも、育った家の中で小さな苦しみを持っていた人はけっこういると思うんですよ。自分がとてもいい家庭、明るい家庭に育った演技をしている人って多いと思うんです。そういう方々が、独りになった時はこの本を読んで、僕も演技をして来たけど、ほかにもそういう人がいたんだなと思ってくれたらうれしいです」

 ──今はどのような小説を

 「今のマイブームが“黒い児童文学”。子供の心理、気持ちを紡いだ話を描くのに力を注いでいます。ジブリが新作を出すたびに、負けるもんかと思います。負けてますけど(笑)」

 ■あらすじ 昭和33年、滋賀県のとある町に生まれたイクは、教会の託児所などに預けられ、5歳の頃に両親と暮らすようになる。近郊の山中の家には、犬のように社交的な猫と人を遠ざけ吠える犬がいた。やがて街中のコンクリートの一軒家に暮らすが、奇癖のある両親とのそりは合わない。イクは、“よそ様”は気づかない、内面の“傷”を負うが、やがて成長し、東京の大学に入学。間借りしながら、倹(つま)しくも確固とした生活を送り続ける。その成長のそばにはいつも犬たちがいた。友人たちや下宿の大家の飼い犬、あるいは散歩の道すがら出合う犬。登場する折々の犬と、そして章立てのテレビタイトルは、イクが通り抜けた昭和の世相を写す。イクの人生がこれからもおだやかであることを祈らずにいられない共感と心癒やされる自伝的長編小説。

 ■姫野カオルコ(ひめの・かおるこ 別名・姫野嘉兵衛) 1958年、滋賀県生まれ。青山学院大学日本文学科卒。学生時代からライターとして活動、90年、持ち込み原稿の『ひと呼んでミツコ』(講談社)でデビュー。スラップスティックコメディーとして評価される。97年、『受難』(文藝春秋)で、第117回直木賞に初候補となる。以降『ツ、イ、ラ、ク』(角川書店)で第130回(2003年)、『ハルカ・エイティ』(文藝春秋)で、第134回(05年)、『リアル・シンデレラ』(光文社)で第143回(10年)と過去4回の直木賞候補となり、『昭和の犬』で今回の150回直木賞を射止めた。

 

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