蘭寿とむ「男役の美学」完成時に去る トップスター伝統の引き際

2014.04.19


「ラスト・タイクーン」で天才映画プロデューサー役を演じる蘭寿とむ ((C)宝塚歌劇団)【拡大】

★蘭寿とむ

 花組のトップスター、蘭寿とむのサヨナラ公演が、東京宝塚劇場で上演中だ(5月11日まで)。

 ミュージカル「ラスト・タイクーン」では、1930年代のアメリカ・ハリウッドを舞台に、若くして栄光をつかみタイクーン(大君)と呼ばれるが、余りに激しい映画作りと自らが見出した女優への異常な愛のために現場から疎まれて滅びてゆく天才映画プロデューサー役。堂々とかっこよく、仕事と恋の狭間で揺れる男の激情と憂愁の二面性を、フラッシュバックのように切り替えて見せるところが巧い。男役の美学が完成の時に宝塚を去る、最高のパターンだ。「こんなステキな男役姿、もう一度見たい!」のファンの声を抑えて退団するのが、トップスター伝統の引き際といえる。

 蘭寿は退団記者会見で、「本公演の2作前の『オーシャンズ11』のオーシャン役で男役を心から楽しめた、辞めるなら今の時期と思いました」と話していた。2、3月の宝塚大劇場でひと足先にサヨナラを終えた今、本当に最後のタカラジェンヌ生活を楽しんでいる。

 ショー「TAKARAZUKA夢∞眩」では、蘭寿の男役のすべてが引き出されている。幼さが消えない顔立ちに反比例するダンス力の濃さ、いつも芝居掛かる歌唱場面、そして極め付きの黒燕尾姿…と、作・演出の齋藤吉正が蘭寿へ向ける眼が温かい。生徒と演出家、共に成長してゆく戦友同士のようで、座付き作者制度のそこがよさである。

 蘭寿は1996年初舞台で、本欄でも紹介済みの宝塚音楽学校最高倍率(48・3倍)を誇る82期生の首席。入団時だけでなく、入団5年目までに行われる3度の試験でもすべて一番で通した優等生の見本だ。が、花組から2006年に宙組へ異動し、11年に再び花に戻ってトップになるまで16年かかった。同期の壮一帆も12年に雪組トップという遅咲き。もう随分前にやはり同期で、トップ娘役となり退団後は女優で活躍中の紺野まひる(37)が「遅れているけど、うちの期で蘭寿は必ずトップになる」と明言していた。

 トップ就任は遅れたが、宝塚で最初に誕生した花組で育ち、最後にまた花組に戻って、大輪の“蘭”の花を咲かせたのだ。 (演劇コラムニスト・石井啓夫)

 

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