高嶋哲夫さん、日本は過去にとらわれすぎ 首都移転など大改革が必要

★高嶋哲夫さん「首都崩壊」(幻冬舎・1700円+税)

2014.04.26

連載:ブック


高嶋哲夫さん【拡大】

 新著『首都崩壊』は2月下旬の発売以来4刷りを数える人気作品だ。首都・東京に迫った直下型地震の危機に首都移転を実現するために行動する官僚たち。なぜ彼らは首都移転を目指すのか。東日本大震災以前から『M8』『TSUNAMI』『東京大洪水』といった災害をテーマにした小説も多い高嶋さんに話を聞いた。 (文・竹縄昌 写真・矢島康弘)

 ──執筆の動機は

 「20年ほど前に首都機能移転チームが立ち上がったことがありました。そのとき、いつかこれをテーマに書きたいなと思っていました。でも、そのころは東京から首都そのものを移すのは現実感がなかったんです。その後、阪神・淡路大震災などをテーマにした作品を書いているうちに、やはり東京で首都機能のすべてを賄うのは難しいと感じていました」

 ──東日本大震災は

 「あの震災の直後からすぐに復旧、復興がスタートしました。それは首都・東京が大きな被害を受けていなかったからです。しかし、その東京が直下型地震で大きな被害を受けたらどうするか。『M8』を書いた頃は立川市辺りに機能を移すと言われていて、果たしてそれでいいのかなと思いました。また、東日本大震災の影響が世界に広まり、特に自動車産業などでは大きな経済的影響も出ました。いまや一国の災害による影響が世界に広まってしまう。そうした視点もすべて含めました」

 ──首都というもののあり方に実に示唆的な内容となっています

 「実は『M8』や『TSUNAMI』『東京大洪水』で災害ものはやめようと思っていたんです。でも、首都移転を自分の都市論、国家論の考え方から書いてみようと、とにかく僕の理屈を書きたかったんです。地方の活性化、東京一極集中の解消にもなりますし。だから、帯にもあるようにノンフィクションではどうしても書けなかった、私たちには秘密にされている、“すぐそこに迫る危機”“超リアルノベル”になったのかもしれませんね。登場人物の口を借りて言いたいことを言っちゃいました。経済にしても日本人が気づいていないことが多いんです」

 ──新しい提案もあります

 「日本は過去にとらわれすぎています。よく戦後レジームからの脱却と言いますが、もっと遡(さかのぼ)って明治からのあらゆることから脱却していいと思います。廃藩置県の名残の都道府県を改めて道州制を本気で考えていいし、これだけ科学技術が進歩し、交通、通信手段が発達したのだから、首都を一つのところにおいておく必要もない。いままで想像もしなかった大きな改革が必要だし、できると考えて書いたのです」

 ──移転先は意外な所でした

 「『M8』を書いたとき、断層がすこしかすっているだけの場所がありました。でも、本書でも書きましたが、いつか北海道に首都ができてもいい。外国の人から見れば、日本の首都がどこにあっても関係ない。東京は東京、大阪は大阪でそれなりの魅力を持った都市なのです。新しい日本の形をみんなで考えていきたいですね」

 ■あらすじ 東京直下型地震の発生確率が「30年以内に75%」から「5年以内に90%」に高まる一方、米国務省は東京直下型地震の大災害が引き起こす東京発信の世界恐慌を懸念する。それらを内々に知った国交省の若き官僚・森崎は首都移転を提案する。プロジェクトチームが発足するが、政府の動きは鈍い。そこに東京で震度6弱の地震が発生。米国の有力な格付け会社が無策の日本政府に業を煮やし、日本国債の大幅格下げを発表しようとする。日本の経済危機を防ぐため、政府は一転、首都移転計画に本腰を入れるのだが。

 ■高嶋哲夫(たかしま・てつお) 1949年、岡山県玉野市生まれ。64歳。慶應義塾大学工学部、同大学大学院修士課程修了。日本原子力研究所研究員を経てカリフォルニア大学留学。79年、日本原子力学会技術賞受賞。1980年に帰国後、塾経営のかたわら小説を執筆。90年、『帰国』で北日本文学賞、94年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞受賞。99年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞と読者賞のダブル受賞。他に『ミッドナイトイーグル』『風をつかまえて』など。

 

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