「写楽」 始まりと終わりを比べると同一誌とは思えぬ違い

2015.11.11


(C)「写楽」1981年1月号/小学館【拡大】

 「音を楽しむように写真を楽しむ」をコンセプトに創刊した写真誌が「写楽」だった。篠山紀信を中心にして沢渡朔(はじめ)、操上(くりがみ)和美など話題の写真家が常に作品を寄せていた。

 今回再見して驚いたのが、その篠山がジョン・レノンとヨーコ夫妻を、彼らの新アルバム「ダブル・ファンタジー」のジャケット向けに撮影したカットを1981年1月号で掲載していたこと。この号が出たのは前年80年12月初頭だから、当時気がつかなかったが、店頭に同誌が並んでいる頃、12月9日(日本時間)にジョンは射たれ亡くなってしまったわけだ。

 写真誌としての性格上、芸能人も被写体として同誌には多く登場している。その中で、中原理恵(81年9月号)も高見知佳(81年3月号)も当時は旬の存在で毎日のようにTVに出ていたが、今どうしているんだろう。時の経過と共に残るものとそうでないものの違いがあぶり出されてしまうのが古雑誌を再見していて痛いほど感じる。

 操上が撮影した自身のヌード写真を83年10月号で公開したのが林真理子。翌月から始まる彼女の連載エッセー「マリコの目」は同時期デビュー作「ルンルンを買っておうちに帰ろう」以降、取材が殺到して、講演会のオファーもかかり、セレブしか出席できないパーティーにも呼ばれ、マスコミの寵児(ちょうじ)となり、フジテレビのキャンペーンキャラクターに起用されるまでをあからさまに描いている。

 自身、プライドとコンプレックスを行き来しつつ率直に成り上がりゆく様子を語っており面白すぎる。読み応えがあるというのはこういうことだろう。事実、彼女の存在感はその後から現在までの30年間増すばかりだ。そういえば、当時、ヌードを断るように勧めたのが、彼女によれば、角川書店にいた見城徹だったというのも意外である。

 結果、「写楽」は5年強で命脈を断ったが、始まりと終わりを比べると同一誌とは思えぬほどの違いだ。ソフトフォーカスのかかった森下愛子の篠山による表紙や大物写真家、木村伊兵衛の未発表作品を取り上げるなどした創刊号は、メディアとしての写真への強い編集部のこだわりが感じられる。

 それが休刊号近くなると、おニャン子クラブの河合その子や新田恵利のグラビアが取り上げられている。生きて現役性を示し続けるには、ぶれのない存在感が求められるということだろうか。 =敬称略 (矢吹博志)

 ■写楽 発行:小学館 創刊号:1980年6月号・390円 休刊号:1986年2月号・450円

 

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