慢性閉塞性肺疾患のため、93歳で死去した映画監督の鈴木清順さん。時代を挑発し続けた巨匠の素顔を映画ジャーナリスト、田中宏子氏が明かす。
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1967年、「訳の分からない映画ばかり作られては困る」と「殺しの烙印」を最後に解雇された鈴木監督。
独特の映像美は「清順美学」とも呼ばれたが、田中氏は「確かに清順映画はリアリズムとは無縁で、ストーリーがよくわからない。なのに、日本的な情緒を排したモダンな感覚、独特の映像や色彩が病みつきになる。カルト映画の先駆者だったと思う」とみる。
クエンティン・タランティーノ、ウォン・カーウァイ、ジム・ジャームッシュら海外の才気あふれる監督たちが鈴木監督を敬愛してやまない。
さぞかし気難しい監督ではと思われてきたが「囲碁の大会で何度かお会いしたが、実に気さくな方だった」と田中氏は振り返る。