今月14日、多臓器不全のため72歳で死去した俳優、渡瀬恒彦さん。映画やテレビドラマで重厚な演技をみせていたが、若い頃はどんな危険なスタントにも体当たりで挑み、仲間からは“マッドドッグ”(狂犬)と呼ばれていた。多くの作品で仕事をともにした映画監督の関本郁夫氏(74)がその伝説をひもといた。
学生時代から空手をやっていたこともあり、体力には自信があった渡瀬さんは、極力スタントマンを使わないことで知られていた。あまりにも無茶なスタントぶりに、ついたあだ名が「マッドドッグ」だったのだ。
自身の監督デビュー作「女番長 タイマン勝負」(1974年)でも渡瀬さんを起用した関本氏だが、そんな“狂犬”ぶりで忘れられないのが「新仁義なき戦い 組長の首」(75年)でのことだ。カーアクションを担当した関本氏は琵琶湖の湖畔で撮影を敢行した。
「恒ちゃんが運転して、助手席に文ちゃん(菅原文太さん)。僕は後部座席でカメラを回したの。恒ちゃんは警報機が鳴っているのに、踏切に突っ込んでいってね。文ちゃんから『おまえ、ええ加減にせえよ』と怒られてるのに、恒ちゃんは『大丈夫、大丈夫』って平気の平左」
さらには関本氏が脚本も担当した「狂った野獣」(76年)ではもっとすごいスタントをやってのけた。