今期のTBS日曜劇場『小さな巨人』は警察もの。警視庁の本庁と所轄署の関係性がドラマの主軸だ。その点ではフジの『踊る大捜査線』シリーズと共通するが、作りとテイストは銀行組織を描いた池井戸潤原作の『半沢直樹』にそっくり。『半沢』のいいとこ取りが、やや悪いとこ取りになった感もある。
ともあれ“怪作”には違いなく、警察ドラマばかりの先頭集団の中でも1、2位を争っている。
牽引(けんいん)しているのが“怪優”香川照之であることは誰しも認めよう。好き嫌いはあろうが、『半沢』の黒幕・大和田常務役で香川が大向こうをうならせた“怪演”、とりわけ視聴率40%超を記録した最終回での土下座シーンは、伝説にさえなっている。
今回の『小さな巨人』の捜査一課長役でも、一歩間違えばギャグとしか取られかねないギリギリの“顔芸”をたっぷり見せている。歌舞伎の名跡「市川中車」でもあるから、それはお手のもの。目をひんむいて主演の捜査一課係長・長谷川博己を所轄に異動させ、いびり倒し、手駒であるはずの捜査一課長付運転担当の岡田将生を振り回す。
血も涙もない保身の塊のパワハラ捜査一課長(テレ朝『警視庁・捜査一課長』の主人公とはほとんど真逆)を憎たらしく演じる香川だが、彼にはもう一つ、昆虫マニアという別の顔(!)も。