【時代のサカイ目】日本の伝統とロックのコラボ 世界が絶賛「和楽器バンド」

4.29

 日本の古典楽器とロックをコラボさせた和楽器バンドが歌う『千本桜』のミュージックビデオが各国で評判を呼んでいる。動画サイト、YouTubeの再生が1800万回を超え、30カ国以上の言語で約5000件もの評価コメントが寄せられている。

 「日本版フォークメタル」(スペイン)、「日本の伝統的な楽器に夢中。これはクールすぎる」(カナダ)。

 彼らは和太鼓、箏、尺八、津軽三味線という日本古来の和楽器とベース、ギター、ドラムを融合させた8人組の和奏ロックバンド。

 『千本桜』は2011年に黒うさPが作詞・作曲・編曲を手がけ、音声合成ソフト「初音ミク」を使ってネット上で公開した。好きなボカロ曲(「ボーカロイド」と呼ばれるアプリで作った曲)ランキングで1位を獲得した。そのため「オリジナル版よりもいい!」(ブラジル)、「この楽器でミクのボーカルを聞いてみたい」(ロシア)という書き込みも。

 昨年4月発売のデビューアルバム『ボカロ三昧』はオリコン初登場2位で22週連続TOP100入りし、今も売れ続けている。

 ひと昔前の日本の音楽業界は、欧米至上主義で和テイストや古いものを軽視する風潮があったが、今や若い世代の伝統芸能回帰がめざましい。例えば盆踊りも夏や秋だけでなく年中開催され、世代の垣根を越えて踊り好きが集い、盆踊ラーなる言葉までできている。

 和だから、伝統だからこうあるべきだという定義は、新しい世代にはなじまないのだ。洋楽を聴かずJ−POPで育った彼らには、“古い”はまさに“新しい”。

 楽器も和楽器、洋楽器というジャンルではなく、「楽器」というくくりで何を組み合せれば面白い音楽を作れるのかという尺度が基準。和楽器バンドは異業種交流が当たり前のように行われる時代にふさわしいコラボとみる。

 ボーカルの鈴華ゆう子は詩吟の師範。独特の節回しや切なさを感じさせる裏声は、どこか懐かしく響く。また袴姿で歌、今様、漢詩などに振りを付けて凛々しく舞う詩舞も幼少より学んでいる素養を生かし、きらびやかな衣装での舞い踊りは妖艶で、歌麿の世界に通じる。

 尺八の神永大輔は都山流師範で耀山の号を持つ。10カ国以上で海外公演の経験があり、地元・福島県いわき市だけでなく東京でも教室を主宰する。津軽三味線担当の蜷川べに、は民謡のジュニア大会で優勝するなどの実績も持つ。

 箏は、いぶくろ聖志(きよし)。高校時代に文化庁の派遣で海外8カ国で箏曲の公演に参加。和太鼓の黒流(くろな)は9歳で和太鼓のプロに。世界15カ国以上で公演を行う。東京都教育委員会主宰の「東京都高等学校文化祭・郷土芸能部門・中央大会」審査員でもある。

 『千本桜』の歌詞は現代を風刺するような内容で、「歌詞の意味が理解できない」というコメントも見られるが、それも含めてバンドの世界と捉えられているようだ。

 昨年は、フランス・パリ郊外で開催された第15回JAPAN EXPOに参加。ヨーロッパ各地から4000人もの熱狂的なファンが押し寄せ、サイン会は入場規制がかかるほど。台湾の単独公演は3分で完売になった。

 日本の伝統文化のロック伝道師となれるか。

 ■酒井政利(さかい・まさとし) 和歌山県生まれ。立教大学卒業後、日本コロムビアを経てCBS・ソニーレコード(現、ソニー・ミュージックエンタテインメント)へ。プロデューサー生活50年で、ジャニーズ系・南沙織・郷ひろみ・山口百恵・キャンディーズ・矢沢永吉ら300人余をプロデュースし、売上累計約3500億円。「愛と死をみつめて」、「魅せられて」で2度の日本レコード大賞を受賞した。2005年度、音楽業界初の文化庁長官表彰受賞。

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