【最新「死に方」事典】心不全に隠れた「死因」

2014.07.27


訃報の死因には「心不全」と「肺炎」が多い(写真と本文は関係ありません)【拡大】

 医者と葬儀屋ほど、新聞の訃報欄をよく読む人種はいないだろう。ただし、医者が興味があるのは、故人の死亡年齢や死因であり、葬儀屋は故人の葬儀日程、資産などである。

 そこで、今回は、訃報欄が伝える「死因」について考えてみたい。よく、私が聞かれることに、「死因に心不全とか肺炎が多いのはなぜ?」ということがある。

 これは、日本人の死因の第1位のがん(10人のうち約3人)が、訃報の死因にほとんど登場しないことからくる「素朴な疑問」だ。実際、訃報欄の死因の大半は「心不全である。

 そこで、よくよく考えていただきたいのは、人間が死ぬということは、最後には必ず心臓が止まるということ。つまり、心不全ということは一般的に、訃報の死因は、役所に提出された死亡診断書に書かれている死因か、あるいは遺族に取材した場合は、遺族が公表した死因が使われる。

 死亡診断書を書く際、医者は死に至った直接の原因、つまり心臓が停止なら「心不全」、肺機能が停止したら「肺炎」となる。このうち、肺炎はこの連載コラムでも以前指摘したように、高齢者の場合はほとんどが「誤嚥(ごえん)性肺炎」であり、誤って気管に入った異物が原因で、普通の肺炎とは異なる。例えば、肝硬変が進んで全身の機能低下が起こり、その結果、嚥下(えんげ)能力が衰え、誤嚥で肺炎が引き起こされて死亡しても、死因は「肝硬変」とは書かれない。

 これは、心不全も同じで、例えば、肺がんの末期で呼吸不全となって死亡しても、「心不全」となる。つまり、心不全の裏側には、多くの本当の死因が隠れているわけで、やはり、がんで死ぬ人がいちばん多いというのが、現状である。

 とくにがんの場合、遺族は世間体などを考慮して、死因にがんと書かれるのを嫌う傾向がある。

 有名人の場合は、訃報欄というより、死亡記事が書かれることが多いので、がんで闘病中だったことは公表される。しかし、そこまで有名でなければ、死因は直接の死因で留まることになる。とくに自殺の場合は、世間に知られたくないので、遺族は役所には公表を控えるように要請し、訃報取材を受けたら、メディアにその旨告げる場合が多い。また、訃報欄掲載を断る場合もある。

 ところで、死因が心不全と書かれていた場合、その真因を本当に知りたがるのは、医者ではなく新聞や週刊誌の記者だ。なぜなら、政治家、財界人、芸能人などの場合、自殺、なんらかのトラブルによる死、愛人宅での心臓発作死など、世間に知られたくない死に方をした際は、ほとんど心不全と記されるからだ。

 心不全が何によって起こったか。また、故人の年齢、あるいは死亡場所など、訃報で伝えれない部分に、真相が隠されている。

 ■富家孝(ふけたかし) 医師・ジャーナリスト。1947年大阪生まれ。1972年慈恵医大卒。著書「医者しか知らない危険な話」(文芸春秋)ほか60冊以上。

 

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