“鬱病”という病名が身近なものとなり、何やらえたいのしれぬ病気のような扱いをされなくなって久しい。しかし、この病気の本質を理解し、的確な治療法、改善法を知る人は、医師にさえ少ないという。自分のためにも組織のためにも、本気で勉強をしておいたほうがよさそうだ。
大きな組織であれば、周囲に1人や2人、鬱病で休職をした経験のある人、現在休職中の人、そして“今後休職が必要な人”がいるはずだ。
しかし、しばらく仕事を休んで復帰した人のすべてが本当に元気で明るくなったかといえば、必ずしもそうとは言えない。無理に元気を装って復職したため、疲弊が見え見えの人や、元気を取り戻したように見えたのに、突如再発してしまう人も少なくない。その理由は何なのか−。
『うつが治る食べ方、考え方、すごし方』(CCCメディアハウス刊)の著者で精神科医の廣瀬久益氏は、鬱病を取り巻く社会の受け入れ態勢の不備を指摘する。
その一例が「診断基準」だ。本来鬱病とは、発症原因も症状の出方も、あるいは回復にかかる時間も回復のしかたも、患者によって1人ずつ異なる病気なのに、国際的な診断基準でひとくくりにし、通り一遍の薬物療法が行われる。病気に応じた医療ではなく、医療に病気を押し込めている−ということができるのだ。
その証拠に、著者の調べでは臨床で使われる抗鬱薬の効果が出るのは3割程度で、多くの患者が病気の長期化や再発に苦しんでいるという。
そこで日々多くの鬱病患者と接する著者は、従来の診断法や治療法に捉われない、実践的な対処法を考察する。それが本書で紹介されている「食べ方」「考え方」「すごし方」だ。